日銀は23年中は金融緩和を継続するものの、長期金利ターゲットを短期化すると予想

日本銀行は4月28日に植田新総裁の下で初めての金融政策決定会合を開催し、金融政策の据え置きを決定しました。同会合で日銀は、金融政策のフォワードガイダンス(今後の方針)を変更、物価安定に関して「賃金上昇を伴う形で」との文言を追加、金融政策の多角的レビューを1年から1年半かけて実施することを決定しました。

野村證券では2%の物価安定目標の早期達成は困難なことから、日銀は2023年中は金融緩和を継続するものの、YCC(長短金利操作)政策の副作用を緩和するため、政策修正を一部行うと予想しています。具体的には、長期金利のターゲットを現在の10年から5年、あるいは2年に短縮すると予想しています。

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10年国債金利ターゲットを2年あるいは5年に短縮する姿を想定する理由としては、せっかく芽生えつつある賃上げや景気回復の流れをYCCの修正で頓挫させないために、(i)YCCの副作用を修正しながらも、(ii)不測の円高余地を抑え、かつ(iii)景気への影響が相対的に強い2~5年金利の安定化を図る、ことが挙げられます。

YCCが撤廃されれば10円程度の円高圧力も

想定される政策変更ごとにドル円レートへの影響を試算すると、最も影響が大きいのはYCCの撤廃で、7%程度の円高をもたらすと試算されます。1ドル=140円程度とすれば、10円弱の円高インパクトがある計算です。仮に長期金利のターゲットを5年に短期化した場合の影響は1.4%、YCCの目標レンジの0.25%ポイントの再拡大、10年国債金利の目標水準の0.25%ポイントの引き上げによる円高インパクトも1.0%程度と軽微なものとなる見込みです。

(野村證券投資情報部 尾畑 秀一)

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