今期中に自己資本が毀損するリスクの低い低PBR銘柄をスクリーニング

PBR(株価純資産倍率)は、株価をBPS(1株当たり純資産)で割ったもので、現在の企業価値が手持ちの資産の何倍に評価されているかを示す指標です。PER(株価収益率)と同様に、株価が割安か割高かを判断するための代表的な指標となっています。

PBRの高い銘柄は割高に見えますが、業績の安定性、利益成長への期待の高さを反映しているとも言えます。言い換えると、PBRの低い銘柄、とりわけ帳簿上の解散価値と同義である1倍を大きく割れている銘柄は、将来的に自己資本が毀損するリスクがあると市場から評価されていることになります。

上の表では、2023年5月22日の株価・データをもとに、業績や流動性の面で不安が少ないと考えられる銘柄(少なくとも今期自己資本が毀損するリスクの低い銘柄)の中から、PBRの低い銘柄を抽出しています。

住宅・不動産や化学、商社、鉄鋼などの業種が多くリストアップ

スクリーニングの結果をみると、自動車関連や住宅・不動産といった成熟産業と見られがちな業種や、商品市況次第で利益が変動すると考えられがちな化学や商社、鉄鋼のような業種が多くなっています。

このスクリーニングでは、ROE(自己資本利益率)7%以上を抽出の条件としています。ROEは自己資本の増殖率と言い換えることができ、ROEとPBRの密接な関係は広く知られています。

例えばTOPIXでは、ROEが7~8%よりも低い領域ではほとんどPBRが変化しないのに対し、7~8%を超える領域ではROEが高いほどPBRも高くなる傾向がこれまで顕著にみられました。これは、投資者がROE7%以上の水準を望んでいることの顕れと考えられます。

つまり、こちらのスクリーニングで抽出された銘柄は、この水準のROEを今後も維持あるいは向上させることが出来れば、市場の評価は変化していく可能性があるということです。

これら低PBRの銘柄においては、不採算事業からの撤退や、自己資本を活用した成長投資、株主還元など、ROEを改善させる施策が打たれるかが、中期的な株価を決めるポイントとなりそうです。

(注)画像はイメージ。

(野村證券投資情報部 大坂 隼矢)

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