本日29日(月)はメモリアル・デー(戦没将兵追悼記念日)で休場です。

1分で読める今週の米国株

5月19日~26日の振り返り

米国政府の法定債務上限問題が重石となり、一進一退となりました。セクター別では、エヌビディア(NVDA)やマーベル・テクノロジーグループ(MVRL)など半導体株の好決算を受けて情報技術が上昇しました。

今週のPoint1.債務上限問題、先週末に基本合意

米連邦政府の法定債務上限問題については、週末にバイデン大統領と共和党のマッカーシー下院議長による妥協点を見い出す努力が行われ、基本合意に至ったことが複数のメディアで報じられました。両氏の間では基本合意に達したものの、民主党左派、共和党強硬派などからは、譲歩し過ぎとの不満がそれぞれの陣営から出ていると報じられており、議会で法案が成立するかは予断を許さず、引き続き注意が必要です。

今週のPoint2.「ハイテク株優位」続くかは景気×インフレの組み合わせ次第

なお年初来、ハイテク株が景気敏感株をアウトパフォームしています。ChatGPTなどの生成AI(人工知能)の普及と、それに伴う半導体や関連製品の需要拡大に対する期待で株価が上昇していると考えられます。さらに、これをサポートする投資環境として典型的には2つのパターンが挙げられます。

1つが、景気は相応に堅調でインフレも抑制的な「ゴルディロックス(適温)」のパターン、もう1つが景気悪化がインフレを抑制する「景気後退(危機)」のパターンです。この2つのパターンは同時には起こりませんが、金利について先々の低下・維持を想起させやすい点で共通しています。2023年は経済指標が堅調な中でのインフレ率の鈍化、銀行不安など上記の2類型を繰り返す中でハイテク株が相対的に有利な環境が続いてきたと言えます。

6月1日(木)には5月ISM製造業景気指数が、2日(金)には5月雇用統計が発表されます。各々、景況感とインフレを考える上で重要度の高い指標であり注目が集まります。

今週のPoint3.ソフトウェア企業の決算発表相次ぐ

今週もセールスフォース(CRM)などのソフトウェア企業を中心に2023年2-4月期決算発表が続きます。

(以上、「1分で読める今週の米国株」)

もっと知りたい!経済指標&金融政策

「雇用」が最大の注目指標

2日(金)に5月米雇用統計が発表されます。非農業部門雇用者数の市場予想は前月比+18.0万人(4月同+25.3万人)と、前月からの鈍化が予想されています。市場予想通りとなれば、FOMC参加者の多くは6月利上げ休止を支持すると考えられます。一方、同+20万人超となれば、労働市場が依然として過熱していると判断されることから、6月追加利上げの可能性が高まります。

雇用への注目度が高いことから、1日(木)に発表される民間統計5月ADP全米雇用レポートも重視されるでしょう。

沈黙期間直前の高官発言は注目度が高い

なお、6月13・14日開催予定の6月FOMCを前に、6月3日(土)から沈黙期間(金融政策に関する公の場でのコメントを控える期間)に入るため、FOMC前の最後の機会としてFRB高官の講演への注目度も高まると見られます。

もっと知りたい!決算発表

2023年2-4月期決算発表は終盤戦に差し掛かり、ソフトウェア大手〜中堅企業の決算発表が相次ぎます。中でも、BtoB(法人向け)ソフトウェアを手がけるセールスフォースは同分野の中でリーダーに位置付けられ、同セクターの経済状況を見通す上で注目が集まります

セールスフォースの事業内容

当社は、クラウド型で企業向けに営業支援や顧客関係管理のCRM(Customer Relationship Management)システムを提供する世界最大手です。当社ソフトウェアのユーザー企業は、営業や顧客に関するデータを一元管理することで、部門内や部門間、経営上層部と現場との間で情報共有ができます。そして、営業の効率化や、より迅速かつ的確な経営判断が可能となります。

主なセグメントは5つ

当社の主要なセグメントは5つあり、ソフトウェア各領域の成長性を横断して見られる点は重要でしょう。営業支援を行う「セールス」、既存顧客を中心にサポートを行う「サービス」、潜在顧客の開拓及びデジタル販売を担う「マーケティング及びコマース」の3部門で売上の半分以上を占めます。他方、残る2つの部門はここ数年での買収で拡大した事業です。

買収の果実実るか

チャットなどで知られるスラックを買収して拡大した「プラットフォーム」、データ統合・分析で知られるタブローソフトウェア、ミュールソフトを統合した「データ」の2部門が業容拡大中であり、足元で既に全社売上高の3割強を占めます。前述の3部門も併せた主要5部門全てにおいて売上高が前年比2桁成長を継続しており、各ソフトウェア領域の成長性に注目が集まります。当社の個別要因としては、毎年のように積極的な買収を続けてきたことや人員整理などの構造改革費用で悪化していたキャッシュフローが再拡大すると見込まれる局面でもあり、関心が集まります。

※数字は2023年1月期通期ベース

ITセキュリティにも注目

なお今週は、5月31日(水)のクラウドストライク・ホールディングス(CRWD)、オクタ(OKTA)、6月1日(木)のゼットスケーラー(ZS)など、ITセキュリティ関連銘柄の決算発表が集中します。ITセキュリティは昨今の世界情勢から鑑みても重要度の高いテーマですが、前回決算発表となる2-3月時点ではマクロ環境の悪化による逆風(受注の減少、ソフトウェアの選別)が見られました。業績に再拡大の兆しが見られるか、内容をよく見て投資判断に活かしたいと考えます。

(FINTOS!外国株 小野崎通昭)

ご投資にあたっての注意点