携帯通信ARPU トレンドが改善へ

動画視聴習慣の定着で携帯データトラフィック(通信量)が拡大し、KDDI では携帯通信ARPU(顧客当たり月額収入)の前年同期比減少率が2023年4月単月で、ほぼゼロに改善した。料金が高いデータ無制限プラン比率がau ブランドの5G(第5世代通信)契約で約6割に達したためである。24.3期はKDDI が携帯通信ARPU 収入の前期比増収を計画する他、NTTドコモは同横ばいを見込んでいる。ソフトバンクでは、24.3期の主要回線サービス収入の減収幅が縮小すると計画されている。

法人事業の利益拡大が続く

法人向け通信ネットワーク需要では、リモートアクセスを含め、インターネット接続やデータ接続需要が拡大している。加えて、デジタル化の加速により各業種向けにソリューションビジネスの増収が続いており、今後は5Gサービスの活用も予想される。クラウドサービスの利用促進によりデータセンター運営事業への需要が高まることも考えられる。通信各社は法人ビジネスへの経営資源配分を高めており、今後も法人事業の営業利益拡大が期待される。

通信各社が中期経営計画を発表

KDDI は22年5月に25.3期を最終年度とする中期計画を発表し、EPS(一株当たり純利益)388円を目標に掲げた。23年5月には中期EPS目標の達成が1年程度遅れるとしたが、達成に向け上限3,000億円の自己株式取得を発表するなど、目標達成に真剣に取組む姿勢を明らかにしている。

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23年5月に発表されたNTTの中期経営戦略では、28.3期EBITDA(償却費・金利・税金前利益)を23.3期比20%増の約4.0兆円とする計画が示された。説明会では営業利益はEBITDAと同様に増加する見方が示され、EPSについては年率5~6%成長を目指すとしている。また、継続的な増配と機動的な自己株式取得を実施する方針である。

NTTでは、成長分野投資を5年間累計で約8兆円行う計画である。内訳は、NTTドコモのスマートライフ事業で約1兆円以上、デジタルビジネス等に約3兆円以上、データセンターに約1.5兆円以上、グリーンソリューションで約1兆円、である。

23年5月発表のソフトバンクの中期計画では、26.3期に当期純利益5,350億円、営業利益9,700億円を目標と示された。コンシューマ事業は24.3期からの利益回復、法人事業は年率二桁営業利益成長、金融事業は26.3期までの黒字化、ヤフー・LINE事業は25.3期以降の利益再成長が掲げられている。コンシューマ・法人事業の設備投資は年3,300億円水準とされ、配当は高水準を維持する方針である。

(野村證券エクイティ・リサーチ部 増野 大作)

※野村週報 2023年6月5日号「産業界」より

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