1分で読める今週の米国株

5月26日~6月2日の振り返り

米国株主要3指数は週半ばまで一進一退でしたが、週後半には上昇しました。2023年財政責任法が成立し米連邦政府の法定債務上限問題がひとまず解決しました。法定上限は2025年1月1日まで適用除外とされ、2024年11月の大統領・議会選挙前に政争の具となる事態を避けることが出来るようになったことは金融市場にとって朗報です。

今週のPoint1.経済指標は「期待通りに悪化」するか?

1日(木)に発表されたISM製造業景気指数は46.9と景気拡大・縮小の境目とされる50を下回りました。市場では、6月FOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げ停止に向けた好材料と捉えられました。今週は5日(月)にISMサービス景気指数が発表されます。財(モノ)よりもサービスのインフレが懸念される足元の環境では、従来以上に市場の関心が集まります。

今週のPoint2.雇用統計は総じてインフレ鈍化を示唆

2日(金)に5月雇用統計が発表されました。「非農業部門雇用者数」は前月比+33.9万人と、市場予想の19.5万人を大きく上回りました。一方で、失業率は4月の3.4%を0.3%ポイント上回る3.7%に上昇しました。

「雇用者」増でも失業率増加のワケ

「雇用者数」は増えているにも関わらず「失業率」が上昇している理由は、失業率が事業所調査ではなく、家計調査の就業者数を基に計算されていることが背景にあります。自営業従事者は家計調査の就業者に含まれますが、非農業部門雇用者数には含まれません。野村の雨宮エコノミストは「インターネットを経由して仕事を受注するギグワーカーなど、法人化されていない自営業従事者が減少している可能性がある」とコメントしてます。

平均時給は鈍化

5月雇用統計では、総労働時間や平均時給が市場予想を下回ったこともあり、総じて労働市場の需給緩和(インフレ圧力緩和)が示唆されました。

今週のPoint3.端境期に決算を振り返る

今週は、2023年2-4月期に決算発表を予定する企業も数社を残すのみとなります。足元の決算発表を振り返ると、直近4四半期平均よりもポジティブ・サプライズ比率(実績が市場予想を上回る比率)の高い四半期となりました。業績が株価のけん引になるか、注目が集まります。

(以上、「1分で読める今週の米国株」)

もっと知りたい!経済指標&金融政策

5日(月)のISMサービス業景気指数

5日(月)に5月ISMサービス業景気指数が発表されます。

ISMサービス業景気指数の概要

全米供給管理協会(ISM=Institute for Supply Management)が算出する非製造業の景況感を示す指数のひとつで、毎月第3営業日に発表されます。毎月発表される米国の主要指標の中で最も早い「ISM製造業景況感指数(毎月第1営業日発表)」とともに、米国の景気先行指標として注目されています。非製造業(375社以上)の購買・供給管理の責任者を対象に、各企業の受注や在庫、価格など10項目についてアンケート調査を実施しています。

三者択一の回答から集計

「良くなっている」、「同じ」、「悪くなっている」の三者択一の回答結果を集計し、季節調整を施した事業活動・新規受注・雇用・入荷遅延の4つの指数をもとに、ISM非製造業景況感の総合指数を算出します。ISM製造業景況感指数と同様に、0から100までのパーセンテージで表し、50%が景気の拡大・後退の分岐点となり、50%を上回ると景気拡大、50%を下回ると景気後退を示します。

市場の目線と注目ポイント

市場予想は52.5(4月51.9)と、前月からの小幅上昇が予想されています。市場予想通りとなれば、サービス業は回復傾向を辿っているものの、3月の銀行経営不安以前ほどの勢いは見られず、6月13日(火)・14日(水)に予定されているFOMCの利上げ停止期待へ支援材料となりそうです。

もっと知りたい!決算発表

底堅い決算内容は株価に追い風

2023年1-3月期(リフィニティブによる集計では、同四半期には2022年12月-2023年2月期、2023年2-4月期を含む)の決算がほぼ出揃ってきました。S&P500 指数構成企業のポジティブ・サプライズ比率は売上高で73%、純利益で76%と、直近4四半期の平均である70%、73%をそれぞれ上回っています。市場予想よりも底堅い内容であり、株価には好影響となります。

アナリストの株価予想を示すリビジョン・インデックスも、今期・来期がともに1.0を超え、上方修正が優勢となりました。

端境期でも、残る決算発表に注目

8日(木)に予定される電子署名ソフトウェア大手のドキュサインなどに注目が集まります。先週のセールスフォースの決算発表では、実績は堅調な内容であったにも関わらず、見通しを据置いたことや株価が年初から大幅に上昇していたことによる利益確定とみられる売りで株価は下落しました。実績では、全5カテゴリで前年同期比2ケタ成長を維持しましたが、マーケティング&コマース部門等、景気全体の動向に連動しやすい部門で成長率が鈍化しました。また、BtoB(法人向け)ソフトウェアは、引き続き顧客側で選別姿勢が続いている状況です。個別企業、セグメント、商品ごとの状況を確認して投資に活かしたいと考えます。

アップルの開発者会議が開かれる

また、5日(月)から9日(金)までアップルの世界開発者会議(WWDC)が開催されています。一部報道によれば、VR(仮想現実)端末を発表するとの話もあり、注目が集まります。

(FINTOS!外国株 小野崎通昭)

ご投資にあたっての注意点