2022年11月にOpenAIが公開した、人間と会話するAI(人工知能)「ChatGPT」が話題を呼んでいる。

ChatGPT では、多様な話題に対して、あたかも意味を理解しているかのように流暢な会話が可能である。語尾を替えるだけで多様なアプリケーションの代用が可能で、汎用性は高い。例えば、入力テキストの語尾を「~について教えて。」とすれば検索エンジンの替わりになる。「~という文章を英語に翻訳して。」とすれば翻訳ソフトウェアの替わりになる。そのうえ、ChatGPTが出力したテキストで不明な部分があれば「今出力してくれた~とはどういう意味ですか。」と追加で質問することもできる。「何故、何故」と無制限に対話を深掘りすることでユーザーの理解も深まりやすい。

ChatGPT は、多言語の膨大なテキストデータ(本、Wikipedia、Webサイトなど)を収集して学習する、大規模言語モデルと呼ばれるAI をもとに作られている。AI が膨大なテキストをひたすら学習することは、赤子が言葉のシャワーを浴びて徐々に言葉を話せるようになるものである。

ChatGPT を使ううえでは注意点もある。第1に、誤った情報を生成するリスクである。ChatGPT はあくまでも、入力テキストに対して人間が自然と思える回答を確率論的に生成しているに過ぎない。そのため意図せず嘘をついてしまう可能性もある。第2に、AI の学習は一定期間で区切る必要があるため、最新情報が取り込まれるまではタイムラグが生じることである。第3に、学習データをもとに意図せず著作権を侵害した回答をするリスクである。

短期では、翻訳や要約、書類の作成補助などビジネスにおける業務効率化で利用が進むと見られる。また、作文やレポートの執筆と相性が良いことから、教育現場における影響は大きい。活用のガイドラインが各所で議論されている。

ChatGPT の本質的な価値は、テキストベースで保存された世界中の英知を広く各人が活用することで、言語や専門領域の壁にとらわれずに、あらゆる領域の発想を掛け合わせたアイデアを創発できることにあると考える。長期では、AI との対話を通じて知見の広さと深さを兼ね備えた人材が育ち、新しい価値を創造するようになることが期待される。

(野村證券フロンティア・リサーチ部 中野 友道)

※野村週報 2023年6月12日号「新産業の潮流」より

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