FRBは「タカ派的据え置き」を実施

FRB(米連邦準備理事会)は6月13-14日にFOMC(米連邦公開市場委員会)を開催し、大方の市場予想通り政策金利を5.0-5.25%で据え置きました。FRBが利上げを見送ったのは、2022年3月の利上げ局面入り以降では初めてです。

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市場にとってサプライズだったのは、FOMCメンバーの政策金利見通し(中央値)において、2023年中に0.5%ポイントの利上げ見通しが示された点です。1回当たりの利上げ幅を0.25%ポイントとした場合、年内中に2回の利上げが想定されていることになります。市場では年内中に0.25%ポイントの利上げを7割程度織り込んでいたことから、今回の政策金利見通しは多くの市場参加者にとってはタカ派的(利上げに積極的)な結果でした。

パウエル議長はFOMC後の記者会見で「引き締めの完全な効果はまだ感じられない」と指摘したうえで、ほぼ全てのFOMCメンバーが23年中に一定の追加利上げを実施することは適切と判断していると発言しました。また、7月FOMC会合については何ら決定していないものの、政策変更があり得る「ライブ会合」になると明言しました。

政策見通しの内訳を確認すると、18名のFOMCメンバーのうち、9名が5.50-5.75%への利上げを予想、これを上回る利上げを予想したのは3名でした。一方、年内に0.25%ポイントの利上げを見込んだメンバーは4人、年内の金利据え置きを見込んだメンバーは2人でした。

野村證券ではこれまで5月を最後に利上げは停止し、FRBは2024年3月会合で利下げを開始するまで政策金利を据え置くと予想してきました。今回のFOMCの結果を受けて、次回7月会合で0.25%ポイントの利上げを行い、政策金利を5.25-5.50%へ引き上げた後、据え置きに転じるとの見方に変更しました。

今回は政策金利が予想通り据え置かれたとはいえ、想定以上にタカ派的な政策金利見通しが示されたことから、結果発表直後にS&P500株価指数は下落、国債利回りは利回り曲線全域に渡って上昇(価格は低下)したものの、その後、長期金利は低下、株価も持ち直しています。また、米株市場の恐怖指数と言われるVIX指数も大幅に低下しました。ここまでの市場の反応を見ると、市場は予想を上回る利上げ見通しを上手く消化したようです。ただし、今回の利上げ局面では、FOMC会合や予想外の経済指標の発表から1日空けて市場が大きく反応するケースが散見された点には注意が必要です。

(野村證券投資情報部 尾畑 秀一)

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