1分で読める今週の米国株

6月16日~23日の振り返り

注目されたパウエルFRB(米連邦準備理事会)議長の半期議会証言の内容は、前週に開催された6月FOMC(米連邦公開市場委員会)から大きな変化はなかったものの、追加利上げの可能性が改めて意識され、株式市場は軟調に推移しました。

今週のPoint1. パウエルFRB議長の意図は?

現在、FRBはこれまでの利上げの効果を見極めている段階とみられます。パウエル議長が今後の利上げ可能性を改めて示唆した背景には、今後も追加利上げがないという姿勢を明確に打ち出してしまうと、市場参加者はその先の利下げ開始時期などを織り込み始めてしまい、これまで行ってきた金融引締めの効果が減殺されてしまうことへの警戒があると見られます。

今週のPoint2. 高官発言への目配り継続を

28日(水)及び29日(木)にはパウエル議長がECB(欧州中央銀行)年次フォーラム等の討論会に参加する予定ですが、利上げ期待をさらに強めるを働きかけるような発言は見込みにくいと考えられます。なおパウエル議長は、「今後の金融政策はデータ次第」としていることから、インフレが徐々に鈍化していけば、実際には追加利上げが行われないということも、十分あり得ると予想されます。今週は、30日(金)発表の5月個人消費支出コアデフレーターや6月ミシガン大学消費者期待インフレ率確報値等が注目されます。

今週のPoint3. マイクロンなど3-5月決算が終盤戦へ

3-5月期決算発表が後半戦に入っています。 26日(月)にはクルーズ船大手のカーニバル(CCL)、28日(水)にはメモリー半導体大手のマイクロン・テクノロジー(MU)、29日(木)にはスポーツ・アパレル大手のナイキ(NKE)が決算発表を予定しています。いずれもセクターを代表する銘柄であり、市場の関心が集まります。

(以上、「1分で読める今週の米国株」)

もっと知りたい!経済指標&金融政策

ミシガン大学の「消費者期待インフレ率」

30日(金)に、ミシガン大学消費者マインド調査が発表されます。前段でもお伝えした通り、FRBの金融政策は「データ次第」という見方が市場に浸透していることから、インフレデータを含む同統計は株式市場に影響を与えています。

同統計は速報値が月中ごろ、確報値が月末に発表されます。景気の先行指数として「消費者信頼感指数」が注目されるほか、コロナ禍以降にインフレが市場の関心事になってからは「期待インフレ率」が関心を集めています。

6月16日に発表された消費者期待インフレ率の6月速報値は、1年先、5年先ともに5月確報値から鈍化しました(前年同期比)。

このまま鈍化が続けば金利低下に依拠した株価上昇は続きますが、前年同月比+3%前後の水準が続き根強いインフレ期待が示されれば、株価の上値を抑える一因となりそうです。

もっと知りたい!決算発表

今週は、2023年3-5月期決算発表の終盤戦です。26日(月)にはクルーズ船大手のカーニバル、29日(木)にはスポーツ・アパレル大手のナイキなど大手が決算発表を予定しています。ここでは、28日(水)に発表が予定されるメモリー半導体大手のマイクロン・テクノロジー(MU)を見てみましょう。当社の業績は、2023年の米国株のけん引役である半導体セクターを見通すうえで注目が集まります。

マイクロン・テクノロジーとは

当社はメモリーとストレージの大手であり、製品はPCからスマートフォンまで様々な電子機器に利用されています。日本では、エルピーダメモリを2013年に買収したことでも知られています。メモリーとストレージの出荷総数でみた世界シェアは、サムスン電子、SKハイニクスに次ぐ第3位です。売上高の約70%をDRAM(電源が入った状態でのみデータの高速な書き込み・読み出しが可能)、残りをNAND型フラッシュメモリー(電源を切ってもデータが消えないが、DRAMより高価で書き込み・読み出しが遅い)が占めています。メモリー業界は競争が熾烈なだけでなく、好不調の波も激しいため、単価・利益率が市場動向に大きく左右されます

2024年は半導体はV字回復も、メモリーは回復途上

6月6日にWSTS(世界半導体市場統計)が、2023年春季の半導体市場の見通しを発表しました。半導体市場全体は、2022年実績と2023年の予測が、前回発表時点(2022年11月)よりも下方修正となっていますが、今回新たに示された2024年については拡大に転じ、V字回復すると予想されています。EVや再生エネルギー、AI向けなどがけん引役です。

内訳別に見てみると論理演算に使われるエヌビディアなどのロジック半導体や、エネルギー関連に使われるディスクリート半導体は2024年に過去最高値を更新する予想となっている一方で、メモリーは2022年の水準に届かない見込みです。

上記表の通り、メモリー半導体市場は大きく、半導体市場全体に大きな影響を及ぼします。マイクロン・テクノロジーの2022年12月-2023年2月期決算では、売上高が前四半期比-10%と市場予想を下回りましたが、3-5月期の会社見通しは前四半期比横ばいとされ、底打ちへの期待は高まりました。今回の決算発表でも、3-5月期の実績とともに6-8月期の会社見通しにも注目が集まります

また、ロジック半導体のほとんどのメーカーがファブレス(工場を持たない)形式である一方、メモリー半導体では自ら生産設備を保有しているメーカーが大半です。製造装置も含めた半導体セクター全体を見るうえでは、当社の業績や設備投資動向は重要な示唆になりそうです。

(FINTOS!外国株 小野崎通昭)

ご投資にあたっての注意点