1分で読める今週の米国株

6月23日~30日の振り返り

28日(水)にECB(欧州中央銀行)フォーラムでパウエルFRB(米連邦準備理事会)議長が、政策金利の引き上げを1会合おきではなく連続で実施する可能性があると指摘し、株式市場ではFRBの利上げが続くとの見方が強まりました。

一方で、先週発表された経済指標は市場予想を上回るものが多く、これまでFRBが積極的に利上げしてきたにも拘わらず米国景気は底堅さを維持していることが示されました。企業業績の堅調さにつながることが期待され、株式市場は金利上昇を伴いながら、週後半にかけて堅調に推移しました。

今週のPoint1. ゴルディロックス(適温)と景気過熱懸念の間で

市場でインフレ懸念が高まった時期には、好調な経済指標はインフレを助長し、長期金利を上昇させるとの見方から株価の下押し材料となっていました。足元では、インフレ指標が総じて市場予想より下振れしていることから、ゴルディロックス(適温経済:過熱も冷え込みもしない景気)の相場となっています。基本的には株価にポジティブですが、好調な景気がインフレを再燃させないかに注視が必要です。月初の重要なマクロ指標である3日(月)の6月ISM製造業景気指数、6日(木)の6月ISMサービス業景気指数に注目が集まります。

今週のPoint2. インフレの粘着性を見る雇用統計

インフレの粘着性を判断する上で重要なのが雇用環境です。最注目は7日(金)の6月雇用統計で、観測気球となる6日(木)の6月ADP全米雇用レポート、7月1日の週の新規失業保険申請件数にも市場の関心が集まります。 6月雇用統計の非農業部門雇用者数の市場予想は前月比+22.5万人(5月同+33.9万人)と、前月の高い伸びは一時的であったとはいえ堅調な雇用増加が続くことが予想されています。

今週のPoint3. 4-6月期決算に向けた業績の位置を確認

3-5月期決算発表がほぼ終わり、決算発表の谷間の週です。リビジョン・インデックス(アナリストの業績予想の方向を示す指数)は3か月ごとに上下を繰り返しており、企業決算発表前に保守的に見直される傾向があります。足元も7月の決算発表シーズンを前にして、下方修正優位です。さらに、一株当たり利益の前年同期比の増減率では4-6月期が底であり、7-9月期には減益率が縮小する見通しとなっています。7-9月期からの反転傾向が明確になれば株価にポジティブに作用すると考えられます。決算においては、実績だけでなく、会社見通しにも注目したいと考えます。

なお、7月4日(火)は、独立記念日の祝日で休場となります。

(以上、「1分で読める今週の米国株」)

もっと知りたい!経済指標&金融政策

夏場の米金利低下は起こるか?

リーマンショック以降、米長期金利が7・8月に低下しやすいという季節性が強まっています。背景としては、同時期に経済指標が下振れやすいなどの理由が挙げられます。「リーマンショック後には、雇用統計を中心に経済指標において季節調整の歪みが生じた結果、特に作用しやすくなった」(野村の小清水ストラテジスト)と考えられます。リーマンショック後には年末年始に雇用が大きく落ち込んだことで、季節調整においてこの落ち込みが一部季節性と認識されてしまった結果、季節調整値が年末年始には大きめに押し上げられやすく、逆に年央に大きめに押し下げられやすいというクセが生まれました。加えてコロナ後には、雇用統計において3~5月分の季節調整済み系列が例年対比で上振れやすく、逆に6・7月分は下振れやすいというクセが発生しています。

雇用情勢は依然として底堅く推移しているものの、5月分の雇用の伸びは実勢対比で過度に高かった面があると見られます。逆に6・7月分が下振れれば、景気に対して過度に楽観的な見方が修正され、米金利が低下しうると予想されます。一方、もし6月分でも最新5月分の前月比+33.9万人のような高い伸びが続いた場合、純粋に景気が堅調であることが示唆されます。この場合、市場は7月以降も利上げが続くとの見方を強め、米金利は一旦上昇しそうです。

もっと知りたい!決算発表

今週は決算発表の谷間となるため、個別企業の決算ではなく市場予想の現在地を確認したいと考えます。米国企業のリビジョンインデックス(直近4週間にアナリストが業績を上方修正した銘柄数/下方修正した銘柄数で示される値)は、概ね3ヵ月周期で循環的に動く傾向がみられます。大多数の企業の決算発表が集中する7月後半~8月前半を前に、業績予想は従来のパターン通り下方修正優位になっています。

四半期EPS(一株当たり利益)を見てみると、4-6月期は前年同期比-8.2%、7-9月期は同-0.2%と減益幅が小さくなっており、4-6月期が前年同期比EPS増減率で見た業績の底です。4-6月期決算においては実績はもちろん、7-9月期以降見通しがどちらの方向に修正されるかに注目が集まります

(FINTOS!外国株 小野崎通昭)

ご投資にあたっての注意点