高い競争力や半導体サイクルの反転に注目

PCやスマホなど民生用需要の不振などで、2022年度下期から足元にかけての半導体需要は厳しい。しかし、半導体メーカーの減産効果や生成AI(コンテンツを生成できる人工知能)向けの需要拡大等で、半導体需要は23年7~9月にボトムアウトが期待できると考えている。実際にDRAMでは、生成AI などに用いられるDDR5やHBM 等の高性能メモリへの需要に拡大の兆しが見えている。半導体材料についても、顧客の保有在庫が少ないフォトレジストなどの需要から、回復が見込まれよう。

日本のフォトレジスト企業の競争力は高い

半導体用フォトレジストは高感度、高解像度、高コントラスト度の製品の開発や製造が求められる。そのため、半導体材料のなかでも半導体ウエハや半導体ガスなどと比べて、新興企業にとって参入障壁は高い。日本企業の世界シェアは90%超と非常に高く、日本企業の高い競争力が活かされている材料である。また、中期的にも生成AIや自動車の電装化などで、需要増が予想される半導体材料であり、参入障壁が高いことから高い採算を維持しながら成長すると考えられる。

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東京応化工業の市場シェア上昇が顕在化

東京応化工業は競合に製品技術力では引けを取らないが、以前は営業マーケティングがやや劣っていた。対策として13年以降は顧客に近い拠点を設立し、開発・営業・生産活動を積極化。軌道に乗った20年近傍から市場シェア上昇が顕在化している。

信越化学工業は2ナノのロジック半導体向けで市場シェアが低下する懸念がある。顧客がBCP(事業継続計画)の観点から調達企業数を増やすと見られるためである。ただし、先端のArFやEUVレジストの売上比率が高いと野村では推定しており、高い営業利益率は維持できると考えている。

なお、野村では化学増幅型の進展とメタルオキサイドレジストの普及が次世代リソグラフィの有望技術とみる。前者は露光に反応した光酸発生剤がベース樹脂の溶解性を変化させ回路パターンの転写が可能となる。EUVレジストの二重露光など、今後は更に技術が進展する可能性もある。

メタルオキサイドレジストは化学増幅型と異なり、ベース材が樹脂ではなく金属となる。少ない露光量でもレジストが反応し露光部の溶解性を変化させるうえに、現像後のパターンの最小寸法が短くなりパターンが正確に形成される。利点の両立が可能なため、1ナノ以下の微細化に対応しやすい可能性がある。金属汚染の管理が難しいといった課題もあるが今後の技術動向を注視したい。

(野村證券エクイティ・リサーチ部 岡嵜 茂樹、吉武 祐翔)

※野村週報 2023年7月10日号「産業界」より

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