1分で読める今週の米国株

6月30日~7月7日の振り返り

先週は、欧州や中国の経済指標では世界経済の減速が意識された一方、米国では市場予想を上回る経済指標が多く、利上げ継続観測が強まり、週後半に株式市場は下落しました。

今週のPoint1. 6月雇用統計は「7月利上げ」を後押し

2023年6月の非農業部門雇用者数(事業所調査)の伸びは事前の予想を下回り、民間部門雇用者数の伸びは低調でした。ただし、雇用者数の予想外の弱さを除くと、今回の雇用統計は全体的に堅調な内容であったと言えます。5月に大幅に上昇した失業率は3.6%に低下した上、賃金・所得の伸びも力強く、時間当たり平均賃金は前月比+0.4%となりました。野村では今回の雇用統計を受け、7月25日(火)-26日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)において、0.25%ポイントの利上げとなる可能性が高まったと考えています。FRB高官講演では、昨年以降の利上げ議論に先行してきたウォラー理事の講演が14日に予定されており、注目が集まります。

今週のPoint2. 12日(水)のCPIに注目

6月後半は、インフレ鈍化(期待)と堅調な景気が組み合わさったことで株価が上昇する場面が目立ちましたが、7月初週の先週は、4%を超えた米長期金利(10年国債利回り)が株価の重石となりました。野村では、2023年後半に経済や雇用が減速していくとのメインシナリオに立ち、7月FOMCが今局面での最後の利上げとなると考えています。一方でリスクシナリオとして、 雇用が堅調(例えば、非農業部門雇用者数が2023年末まで月+15万を上回るような状態)となり、利下げ開始時期の市場織り込みが2024年初から2024年後半まで後ずれするようなケースでは、米長期金利は一時的には4.5%前後までの上昇余地があると見込まれます。こうした環境では、金利上昇に弱いハイテク株が下押し圧力を受けやすい点には注意が必要でしょう。今週は12日(水)に発表されるインフレ指標の6月CPI(消費者物価指数)に注目が集まります。

今週のPoint3.4-6月期決算発表、始まる

もっとも、足元のハイテク企業業績は底打ちの兆しもあり、金利上昇の圧力をはねのけEPS(一株当たり利益)の成長で株価上昇となる可能性も秘めています。今週からいよいよ、S&P500企業の8割以上が決算発表を行う4-6月期決算シーズンに突入します。13日にはデルタ航空(DAL)やペプシコ(PEP)、14日にはJPモルガン・チェース(JPM)やシティグループ(C)、ウェルズファーゴ(WFC)などの大手銀行、大手資産運用会社のブラックロック(BLK)、その他、ダウ指数構成銘柄では医療保険のユナイテッド(UNH)などが発表を予定しています。

(以上、「1分で読める今週の米国株」)

もっと知りたい!経済指標&金融政策

12日(水)発表のCPIに注目

今週は12日(水)に発表されるインフレ指標の6月CPI(消費者物価指数)に注目が集まります。足元のデータは、6月のインフレ圧力緩和を示唆しています。野村では、6月のコア消費者物価(CPI)上昇率が前月比+0.2%(四捨五入前:+0.160%)へ、5月の同+0.4%(同:+0.436%)からコロナ禍以降最低の水準まで顕著に減速すると予想しています。

減速の主要因の1つは中古車価格であり、2ヶ月連続で大幅に上昇した後、再び下落に転じると予想されます。さらに、宿泊費や航空運賃などの観光関連も6月は前月比で下落したと考えられます。借家家賃と持家帰属家賃の上昇率は、緩やかな減速を続けたとみられます。スーパーコア・インフレ率、すなわち賃料関連を除いたコアサービスCPI上昇率は、5月の前月比+0.24%から6月は同0.0%に急減速したとみています。

いくつかの下落要因は今後数ヶ月で部分的に反転する可能性がありますが、消費者のサービス支出の勢い低下、賃貸住宅市場の供給過剰、自動車販売関連の信用引き締めにより、緩やかなディスインフレのプロセスが始まったと考えています。連邦準備制度理事会(FRB)が単月のデータに反応する可能性は低いものの、6月のCPIは7月のFOMC後の追加利上げの可能性を低下させる可能性が高まっています。これは7月に予想される政策金利の引き上げが現在の利上げ局面における最後の利上げになるだろうとの野村の見方に沿っています。

もっと知りたい!決算発表

決算発表を迎えるにあたり、各セクターの産業グループ別EPS前年比増減益率を確認してみましょう。産業グループ別のカテゴリは名前だけではわかりづらいですが、どの企業がどのグループに入るかを理解すると、分野ごとの動向を理解するのに役立ちます。例えば、下図で1位の消費者サービスグループには、外食、ホテル、クルーズ船運航企業などが含まれます。今年の増減益率で2位につけている小売産業グループには、アマゾン・ドットコム、イーベイ、ブッキング・ホールディングス、エクスペディアなどが含まれます。また4位のメディア・娯楽産業グループには、メタ・プラットフォームズ、アルファベット、ネットフリックスなどのインターネット関連企業が含まれます。これらは、総じて2024年予想(後述)でも好調な企業が多く、今期の実績と来期以降の実績、いずれも注目が集まります。

翻って半導体・半導体製造装置は24業種中の下位から数えて5位に位置します。一方、2024年予想では増減益率で1位となっており、足元の株価上昇は来期以降の業績反転や、生成AI(人工知能)やクラウドサービスなど長期の成長性が期待されていることが示唆されます。こうしたセクターの決算発表では、実績も重要ながら、会社見通しが株価を大きく左右します。

今週発表が相次ぐ銀行セクターは、2023年こそ上位に位置していますが、2024年には景気後退や金利低下の影響を受け、唯一の減益グループと市場に予想されています。こうした見方を覆すことができるか、注視したいと考えます。

(FINTOS!外国株 小野崎通昭)

ご投資にあたっての注意点