生成AI(コンテンツを生成できる人工知能)が注目を集めている。同市場の拡大はCPU(中央演算処理装置)やGPU(画像処理半導体)、FPGA(論理回路変換半導体)といった演算処理の役割を担うロジック半導体の需要を押し上げるとみられる。

AI モデルを開発するには、大量の学習データを機械に読み込ませ、繰り返し計算させることで分類や識別のルールをコンピューターに学習させる手法、いわゆる「機械学習」が必要不可欠である。この機械学習は、大量のデータから学習済みのAIモデルを作り出す「学習プロセス」と、その学習済みのAIモデルに従ってデータの識別、解析を行う「推論プロセス」に分けられる。

両プロセスでは求められる性能が異なるため、それぞれに適した半導体が必要となる。学習用のAI 半導体は主にクラウド(サーバー)側で使用されており、大量のデータを処理するための高い演算能力が求められる。そこで、アクセラレーター(処理能力を高めるために、追加して利用するハードウエアやソフトウエア)としてGPUを使用し、処理速度を高める手法が一般化している。GPUは並列処理を得意としており、膨大な数の計算を繰り返す学習プロセスの仕組みとマッチした。

一方、推論用のAI半導体はクラウド側だけでなく、スマホや監視カメラなど、エッジ側にも搭載され、学習用に比べ高い演算能力は必要としない。ただし、搭載されるデバイスにより必要となる処理能力は様々で、デバイスによっては低遅延、低消費電力といった性能がより一層要求される。この推論用のAI半導体ではFPGAの採用が進んでいる。FPGA は、対象のAI モデルに合わせた回路構成が可能で、低遅延や低消費電力も実現できるためだ。

AIの進展は半導体製造装置市場にも追い風となりそうだ。これまで、スマートフォン(以下スマホ)の性能競争が技術革新をけん引してきたが、同競争が下火になることが半導体市場の中期的なリスクとして懸念されてきた。しかし、より高性能な生成AIが誕生し、その処理を行うAI半導体が搭載されるようになれば、スマホの性能競争は継続すると予想される。スマホに限らず、AI が半導体市場の技術革新をけん引し、最先端の半導体製造装置の需要を拡大させていくと期待したい。

(野村證券投資情報部 大坂 隼矢)

※野村週報 2023年7月17日号「投資の参考」より

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