
強気な賃上げを行った会社業績予想 低成長銘柄に投資機会
賃金の上昇が明確化してきています。7月7日に公表された毎月勤労統計によれば、5月の月間現金給与額は前年比2.5%増、所定内給与も同1.8%増となり、春闘の影響が顕著に表れています。賃上げを実施した企業の割合は、TOPIX構成銘柄の92%に上り、前年より賃上げ幅が大きかった企業も90%に達しました。これらはデータが取得可能な2010年以降で最大です。言わば、今年は2010年以降で最大の賃上げの年だったと言えるでしょう。こうした賃上げが株価に与える影響について考察してみましょう。
株価との関連性においては、「賃上げを行った銘柄」は「賃上げを行わなかった銘柄」を12月までアウトパフォームする傾向があります。賃上げは株価に対してポジティブな影響を与えると言えます。将来の業績見通しが明るい企業で賃上げが行われやすいことがその背景にあると考えられます。
さらに、賃上げ率によって銘柄を分けて考えると、賃上げ率の高い銘柄が低い銘柄をアウトパフォームする傾向が見られます。今年は賃上げ率が高く、その中でも上位と下位の銘柄の差が大きいため、賃上げ率が高い銘柄が優れたパフォーマンスを示しやすい環境だと言えます。
また、賃上げの要求水準と妥結水準で定義した賃上げの上振れ率が大きかった銘柄や、前年と比較して賃上げ率が高かった銘柄ほど、その年の決算で業績が会社予想を上回る傾向があります。これは、経営者が将来の業績に自信を持っている銘柄ほど、積極的な賃上げを行うためと解釈できます。
特に、会社予想の売上高成長率が低い銘柄ではこの傾向が強く現れます。高成長が見込まれる銘柄では、賃上げが示す経営者の自信が既に会社予想に反映されている可能性があります。しかし、低成長予想の銘柄では、会社予想が保守的で、賃上げが示す経営者の自信がまだ充分に反映されていないかもしれません。したがって、低成長予想の銘柄で積極的な賃上げが行われていることは、会社予想の保守的さと、今期業績上振れの可能性を示唆していると言えます。
これらの業績上振れの期待感を背景に、低成長予想ながら積極的な賃上げを行った銘柄は、過去に安定した超過リターンを獲得してきました。大幅な賃上げが行われたため、賃上げ率の大きい銘柄に高いパフォーマンスが期待できる中、業績の上振れも見込まれるこれらの銘柄に投資機会があるとみます。会社の業績予想は低成長ですが、春闘で積極的な賃上げが行われた銘柄に注目します。
会社業績予想は低成長だが強気な賃上げを行った33銘柄
要約編集元アナリストレポート「日本株クオンツストラテジー – 強気な賃上げは業績上振れのサイン(2023年7月18日配信)」(プレミアムプラン限定)では、会社の業績予想は低成長ですが強気な賃上げを行った銘柄リストを公開しています。
(FINTOS!編集部)
(注)画像はイメージ。