YCC修正の最有力は7月会合

7月の日銀金融政策決定会合が近づき、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の修正に関する期待が高まっています。日銀の内田真一副総裁のインタビュー記事が、YCC修正への市場の期待を後押ししたと見られます。内田氏はYCC修正について、「バランスをとって判断していきたい」と述べました。しかし、その記事の重要なメッセージは、7月会合における政策変更の有無ではなく、金融緩和を持続する中で「副作用」の軽減を行う場合にYCCが修正され、それはYCCの解除とは異なるという点に副総裁が言及したことです。

日本銀行が示す金融緩和策の副作用には明確な指標がなく、それを数値化するのも困難です。さらに、副作用には現時点で確認できるものだけでなく、潜在的なものや将来可能性のあるものも含まれていると考えられます。今回、そういった観測困難な副作用が昨年12月と比較してどのように変わったのかを調査しました。

債券市場の機能度低下は依然として存在しますが、2022年12月に比べると改善されています。また、政策修正が行われなかった2023年4-6月と比較して急速に悪化した指標も見受けられません。新規貸出金利の動きや貸出残高の増加率、金融機関の貸出態度を見ても、金融仲介機能への副作用が2023年4月以降に深刻化したとは言えません。全体を見ると、明らかな副作用は昨年12月と比べて改善の方向にあると言えます。

一方、潜在的な副作用については、2023年6月会合での「主な意見」で、一部の政策委員がYCC解除により生じうるコストを指摘したことが注目に値します。政策委員の総意ではないでしょうが、これは潜在的な副作用に対する懸念が委員会内で高まっていることを示しています。この認識を基に、野村證券のメインシナリオでは、YCC修正が2023年7-12月にかけて行われる(7月が最有力と見られる)と予想しています。

野村證券の試算では、日銀のYCC修正そのものがドル円相場へ与える影響は、1-2%の円高に留まると見ています。YCC修正後の初動として、1ドル=135円を下回る可能性は高いとみていますが、その円高が持続する可能性は低いと考えます。ただし、昨年12月のように市場が短期金利の上昇を織り込めば、円高加速のリスクもあります。一方、日銀が7月会合で政策修正を見送る場合、市場は再び米国と日本の金利差に焦点を当て、1ドル=140円台を回復すると予想しています。

(FINTOS!編集部)

要約編集元アナリストレポート「国際金融為替インサイト – 7月日銀政策会合に向けたYCC副作用の点検(2023年7月18日配信)」(プレミアムプラン限定)

(注)画像はイメージ。

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