1分で読める今週の米国株

7月14日~7月21日の振り返り

先週は、4-6月期決算発表が相次ぎました。ネットフリックスやテスラ、TSMC(台湾セミコンダクター)などハイテク株が市場の失望を招いた一方で、ジョンソン・エンド・ジョンソンやゴールドマン・サックスなど消費財、ヘルスケア、金融といった銘柄の株価は堅調でした。インフレや長期金利動向というよりは決算内容が、大型株中心のNYダウ指数(21日までに10連騰)と、ハイテク株の多いナスダック総合指数の明暗を分けました

今週のPoint1. 純利益ベースでの決算内容は堅調

調査会社リフィニティブによる7月21日時点の集計では、これまでに2023年4-6月期決算発表を終えた89社(2023年3-5月期決算も含む)のうち、73.0%の企業で、純利益の決算実績が事前のアナリスト予想を上回りました。一部ハイテク企業で見通しなどが市場予想に届かないケースはあるものの、全体としては直近4四半期と同程度の水準を維持しています。

今週のPoint2. GAFAM決算に要注目

今週は25日にはマイクロソフトとアルファベットが、26日にはメタ・プラットフォームズが2023年4-6月期決算を発表します(アップルとアマゾン・ドットコムは8月3日に予定)。GAFAMは5社だけでS&P500指数構成企業の純利益の13%を占めます。決算実績に加え、会社業績予想や経営陣のコメント等を確認しながら業績動向を見極め、他企業へのインプリケーションも確認したいと考えます。

(注)収益、純利益に占める割合は2022年度ベースで、継続的に観察可能な調整後利益が公表されている企業で計算している。GAFAMとは5社の頭文字を並べた呼称で、Gはアルファベット傘下のグーグル(Google)、Aはアップル(Apple)とアマゾン・ドットコム(Amazon.com)、Fは現メタ・プラットフォームズで旧社名のフェイスブック(Facebook)、Mはマイクロソフト(Microsoft)を表す。

(出所)リフィニティブより野村證券投資情報部作成

今週のPoint3.「最後の利上げ」になるか、FOMC

決算に加えて26日にFOMC(米連邦公開市場委員会)の結果が発表されます。今回の会合での0.25%ポイント利上げは株式市場では織り込み済みとみられ、サプライズとはならないとみられます。株式市場参加者の関心は9月以降の会合における金融政策の方向性にあると推察されます。FOMCの結果が発表された際には、声明文の内容とパウエルFRB議長の発言から、今後利上げが継続されるか否かを読み取っていきたいと思います。

経済指標では、28日の6月個人消費支出・所得統計の発表に併せ、重要なインフレ指標である6月コア個人消費支出デフレーターが発表されます。さらに7月ミシガン大学消費者センチメント指数(確報値)の発表に併せ、期待インフレ率も発表されます。これらの発表は7月FOMC終了後ですが、市場の関心事は9月以降の金融政策の方向であることから、それらの内容によっては株式市場が大きく反応する可能性が考えられ、留意したいと考えます。 

(以上、「1分で読める今週の米国株」)

もっと知りたい!経済指標&金融政策

26日(水)発表のFOMC

26日(水)に結果が発表されるFOMCでは、0.25%ポイントの利上げが予想されています。FOMCの声明文には、概ね変更がないと予想されます。また、今回の会合でFOMC参加者が政策金利見通しや経済見通しを公表することはありません(見通しは3、6、9、12月のFOMCで発表)。そのため、今後の政策決定の指針を探るためには、パウエルFRB(米連邦準備理事会)議長の記者会見に注目する必要があります。

パウエル議長は、7月会合での利上げ後さらに1回の利上げに言及する可能性が高く、始まったばかりのディスインフレ(インフレ減速)傾向に過度に期待しないよう、市場に警告するとみられます。金融政策が経済に影響するまでのタイムラグや中立金利に関する発言があれば、注目が集まるでしょう(中立金利はインフレを加速も減速もさせない政策金利の水準)。

野村では、7月FOMCが現在の引き締め局面における最後の利上げになると考えています。FOMC参加者は、引き続きインフレに対する慎重な姿勢を維持すると見られますが、2023年後半を通してディスインフレが継続することで、FOMCは7月会合以降も政策金利を据え置くことになると予想しています。

もっと知りたい!決算発表

ここでは、今週決算発表を迎えるNYダウ時価総額上位、ナスダック総合指数時価総額上位銘柄の中から、マイクロソフト、アルファベット、メタ・プラットフォームズ、ビザの4銘柄について注目点を確認したいと考えます。

マイクロソフト

ここ数年の当社の決算発表後の株価は、クラウドサービスであるAzureの前年同期比増収率の影響を大きく受けてきました。他方、今回の決算は生成AI関連が市場の注目を集めると見受けられます。米ウルフリサーチの分析によれば、生成AIを製品ポートフォリオに組み込んだだけでも、利用者1人当たりの月間収入は最大35ドルにまで高まることが見込まれ(Microsoft 365で約30ドル、Bing Chat Enterpriseで約5ドル)、これが増収ドライバーになると期待されています。現在、当社製品の利用者数は3億人にも上るため、商機が大きいことは明らかです。

さらに、18日(火)にパートナー向けのカンファレンス「Microsoft Inspire」で発表された各種製品群の注目度も上がっています。売上高見通しなどで当製品群に言及があるかが市場の評価を左右しそうです。

前回決算発表よりは注目度は低いものの、引き続き設備投資の見通しやAzureの増収率ガイダンスも重要です。4-6月期のAzureの為替調整後増収率のガイダンスは26.5%であり、これを越えられるかに関心が寄せられます。

アルファベットとメタ・プラットフォームズ

両銘柄は、年初来ナスダック総合指数をアウトパフォームしています。背景には、悲観的な見通し修正に伴うバリュエーションの切り上がり、人工知能(AI)の開発などが考えられます。ただし、業績予想自体は下方修正が続いており、今決算発表で上方修正に転じることができるかが最初の注目点になるでしょう。

米ウルフリサーチの調査によれば、4-6月期はデジタル広告の好調な伸びが続いているとしています。また、オフライン広告からのシェアを奪ったこともあったとみられます。一方で、これまでの利上げ効果、米国で学生ローンの返済猶予期間が終了することなどのマクロ面での懸念もあり、会社のガイダンスに注視が必要です。

ビザ

4月に取扱高が下向きに転じたことから、消費支出の減速が懸念されていました。しかし、5-6月の米経済指標は比較的底堅さを保っていたことから足元の株価は安定的に推移しています。特に旅行関連が好調を維持しており、越境取引や宿泊・レジャー関連が支えになると想定されます。広告セクターと同様、景気後退懸念に関する会社コメントがあれば、重要なチェックポイントとなるでしょう。

(FINTOS!外国株 小野崎通昭)

ご投資にあたっての注意点