野村は米国の利上げは今回をもって打ち止め、利下げは2024年3月から開始と予想

FRB(連邦準備理事会)は7月25-26日にFOMC(米連邦公開市場委員会)を開催し、大方の事前予想通り0.25%ポイントの利上げを決定しました。フェデラル・ファンド金利の誘導目標レンジは5.25-5.50%と、約22年ぶりの高水準に引き上げられました。今回の利上げはほぼ確実視されていたことから、FOMC後の市場の反応は限定的でした。米国株式市場ではNYダウが13営業日連続で上昇し、1987年以来最長の連続高を記録しています。

今後の政策運営に関してパウエルFRB議長は、会合後の記者会見で、1会合置きの利上げに傾斜しているのかどうかも含め、将来の政策行動について何も決定していないと発言、金融政策は「会合毎」に「データに基づいて判断する」と説明しました。政策スタンスに関しても、FRB内での見解の相違を反映し、利上げ・据え置き両方の可能性に言及するバランスの取れた発言に終始しました。

野村證券では、今回の結果を踏まえた上で、米国の利上げは今回をもって打ち止めとの従来の見通しを据え置きました。FRBは当面の間政策金利を据え置き、2024年3月から利下げを開始し、24年中は会合毎に0.25%ポイントの利下げを行うと予想しています。

パウエル議長は注目すべき経済データとして、特にインフレ関係統計を重視していることを示唆しました。9月19-20日の次回会合までには、消費者物価や雇用統計など重要な月次統計の発表が2ヶ月分予定されており、市場が金融政策を織り込むには時間を要すると考えられます。夏季休暇が控えていることもあり、経済指標が極端に振れることがなければ、市場には明確な方向感は生じ難いと想定されます。

今後の注目点は8月下旬に開催されるジャクソンホール会合となりそうです。FRBは6月会合では政策金利を据え置いた上で、政策金利見通しでは年内中に0.5%ポイントの追加利上げ実施の可能性を示唆しました。ただし、市場では年内中の追加利上げを3割程度しか織り込んでいません。パウエル議長がFRBと市場の利上げ観測の間の温度差を懸念する場合には、過去にも幾度と見られたようにジャクソンホール会合で何らかのメッセージを送ることが予想されます。その際には、パウエル議長の発言が相場のトレンドを転換させるトリガーとなる可能性があることから注意が必要です。

(野村證券投資情報部 尾畑 秀一)

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