米企業業績は23年4~6月期に底入れへ

FRB(米連邦準備理事会)はインフレ抑制のために積極的な政策金利の引き上げを行ってきたため、経済の成長減速をもたらすと予想され、野村では米国の実質GDP成長率は、2022年の前年比+2.1%に対し、23年は同+1.9%に鈍化し、24年は同-0.1%と小幅なマイナス成長を予想する。

野村では、今回の利上げサイクルにおける政策金利の到達点は、23年7月FOMCで0.25%ポイント引き上げられた後の5.25~5.50%と予想している。23年はこの水準で政策金利を維持した後、24年1月FOMCでも据え置かれ、24年3月FOMCから利下げを開始し、7会合連続で0.25%ポイントずつ引き下げ、24年末の政策金利水準は3.50~3.75%と予想している。

FRB は、量的緩和で拡大したバランスシート(証券ポートフォリオ)を縮小させている。野村では、バランスシートの縮小は当面、現行のペースで行われ、24年4月以降に終了すると予想する。

次に企業業績をみると、調査会社リフィニティブによる7月28日時点の集計では、S&P500指数構成企業のEPS(1株当たり利益)は、23年1~3月期の前年同期比-3.1%に対し、23年4~6月期は同-9.1%と、減益率の拡大が予想されている。その後、23年7~9月期は同-0.7%と減益率が縮小し、23年10~12月期には同+8.1%へと増益転換が予想されている。23年7~9月期予想については今後、減益率が拡大することも考えられるが、減益率という点からは23年4~6月期が大底となる可能性が出てきた。

年度では、23年は前年比-0.1%、24年は同+12.5%、25年は同+11.7%と予想されている。今後、米国景気が悪化すると想定される中で上記の企業業績予想となっている要因としては、米国には独自の技術力やビジネスモデルでグローバルに競争力を発揮し業容を拡大している企業が多数あることが考えられる。そのような企業は人工知能(AI)の普及など新しい事業機会を捉え、業績を拡大していくと期待される。

野村では、米長期金利(米10年債利回り)は今後、低下していくと予想している。米株式市場では、年後半の米企業業績の回復を織り込むようになろう。

競争力で業容を拡大している企業に着目

米国株式の銘柄選別の視点としては、独自の技術力やビジネスモデルで競争力を発揮している企業群に着目したい。

一例として、画像編集やイラスト制作ソフトウエアで競争力の高いアドビに着目したい。電子商取引やソーシャルメディアの普及に伴い、当社製品への需要も拡大している。AI を組み込んだ製品の提供でユーザー層の拡大を図るなどの取り組みを行っており、今後AI 技術の収益化が予想される。

クラウド型で企業向けに営業支援や顧客関係管理のCRM(Customer RelationshipManagement)システムを提供するセールスフォースに着目したい。大型企業買収が続き、22.1期、23.1期と業績は足踏みが続いたが、買収した企業の業績貢献もあり24.1期以降は増益が予想される。

企業のアプリケーションシステムのインフラを監視、管理するAPM(ApplicationPerformance Monitoring)と呼ばれるソフトウエア群を提供するダイナトレースにも着目したい。企業が監視し分析すべきデータの加速度的な増加というトレンドが同社製品への追い風となっている。

コンピューターやコンシューマーエレクトロニクス製品向けのCPU(中央演算処理装置)やGPU(グラフィックス処理半導体)などを主力とする半導体メーカー、アドバンスト・マイクロ・デバイセズにも着目したい。製品製造はファウンドリー(半導体受託製造企業)に委託し、これら企業が提供する最先端製造プロセスを用いて製品を供給する。直近では最先端の製造技術の確立に苦戦している競合企業に対し、優位に競争を進めている。

売上高で世界最大のソフトウエア企業、マイクロソフトはクラウドの業容拡大に加え、対話型AI、Chat GPTのビジネス化で先行しており、引き続き着目される。

e コマースの最大手企業のアマゾン・ドットコムは、コロナ禍で急増した需要に対応するための能力増強投資で損益は悪化していたが、今後業績の回復が期待できる。

それぞれの分野で競争力を発揮し、着実な業容拡大で長期間増配を続ける優良企業も紹介したい。過去25年以上増配を継続している企業で構成される「S&P500配当貴族指数」採用で、かつNY ダウ指数の構成銘柄でもある企業は、シェブロン、スリーエム、キャタピラー、マクドナルド、プロクター・アンド・ギャンブル、コカ・コーラ、ウォルマート、ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス、ジョンソン・エンド・ジョンソン、IBM 等である。

(野村證券投資情報部 村山 誠)

※野村週報 2023年8月7日号「焦点」より

※掲載している画像はイメージです。

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