2023年7月(7月3~28日、以下同)の主な投資部門別の売買動向を現物と先物の合計で概観すると、海外投資家や個人投資家、事業法人が買い越した。売り越したのは、信託銀行や投資信託であった。

海外投資家は現物と先物の合計で7,390億円を買い越した。第2週の買い越しが8,816億円と大きかったが、以下で述べる同週に生じたETF(上場投資信託)の分配金捻出売りの影響で構造的に買い越しやすかったと見られる。同週を除けば、第1週と第3週が500億円台の買い越し、第4週が2,564億円の売り越しだった。月後半に主要3中央銀行の会合、国内企業の第1四半期決算発表シーズンを控える中で、様子見姿勢になりやすかったと見られる。

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(注)対象は東京・名古屋の現物市場と、TOPIX先物、ミニTOPIX先物、日経225先物、日経225mini、JPX日経400先物の合計。プラスは買い越し、マイナスは売り越しを示す。23年度は23年7月まで。
(出所)東京証券取引所、大阪取引所の各データより野村作成

個人投資家は5,160億円を買い越し、4カ月ぶりに買い越しに転じた。株価が下落した7月第1、2週を中心に買い越しており、押し目買いを行ったと見られる。

事業法人は2,609億円を買い越した。うち現物の買い越し額は2,524億円と、前年同月比1,640億円減少した。売り付け総額が同2,613億円増加しており、政策保有株の売却が増加していることを示唆している。

信託銀行は1兆7,326億円を売り越した。6月までの株高を受けた年金基金によるリバランス(資産配分の調整)目的の売りが行われたと見られる。また、国内上場ETFによる分配金捻出売りの影響も大きかったと見られる。捻出売りの規模は約1.2兆円となったと試算している。

(野村證券市場戦略リサーチ部 藤 直也)

※野村週報 2023年8月14日号「株式需給」より

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