フォード財団などの米国の民間財団は、寄付金を運用することにより、所定の支出に対する原資を確保することが一般的である。価値を永続するために、財団は将来のインフレによる実質的な資産価値の低下を防ぐことを重視しており、長期的な目線で投資目標を設定することが多い。また、流動性に対する制約も比較的小さく、単年度の下落幅に対する許容度が相対的に高い傾向にある。長期投資とインフレ対応の参考として、米国民間財団の具体的な資産配分を確認したい。

Commonfund社(非営利団体等の運用を支援する米資産運用会社)による2021年の調査では、調査対象の231財団のポートフォリオは株式の比率が債券や短期資産と比べて高い(図表参照)。ポートフォリオの半分を占めるオルタナティブとは、株式や債券などの伝統資産を代替する資産(不動産など)や投資手法(ヘッジファンドなど)のことである。オルタナティブの割合が最も高くなった経緯として、とりわけリーマンショック以降、民間財団は株式や債券との分散効果・収益率の向上を図るためにオルタナティブへの配分を拡大してきたことがあげられる。調査対象の財団の平均報酬控除後収益率は、21年で+16.3%、過去5年で年率+11.7%と、非常に好調であった。

Captrust 社(米独立系投資顧問会社)による22年のサーベイでは、ウクライナ情勢と主要中央銀行による金融引き締め加速を背景に、多数の民間財団の最大の懸念はインフレと市場のボラティリティ(変動)であり、今後最も増やしたい資産クラスはオルタナティブであるという。

米国民間財団のように、株式と債券以外の資産へ分散投資することも不確実性への対応方法の一つだと考えられる。

(野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティング 孫 悦)

※野村週報 2023年8月21日号「資産運用」より

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