1分でわかる今週の米国株

先週発表された米経済指標の多くが市場予想を上回りました。米長期金利(10年債利回り)は上昇したことが重石となり、株式市場は軟調に推移しました。

今週のPoint1. デカップリングする米中経済、米国株の重石に

15日(火)に発表された7月の米小売売上高は前月比+0.7%と市場予想(同+0.4%)を大きく上回るなど、米国経済は堅調な指標が相次いでいます。一方、同日発表となった中国の7月工業生産高や7月小売売上高は総じて軟調、中国恒大集団の米国における破産申請などネガティブな報道も相次いでいます。また物価の観点でも、米国はインフレ懸念が根強い一方、中国はデフレ基調とデカップリング(分離)しています。

先週だけを見れば、米国での「経済堅調×インフレ懸念」は米長期金利上昇と米国株のPER(株価収益率)への低下圧力に、中国での「経済軟調×デフレ」はグローバル企業の予想EPS(一株当たり利益)への下押し圧力になっていると見られます。こうした状況が続くかは見通せませんが、経済指標から目が離せない状況は続きそうです。

米経済を見る上では、景気指標では23日(水)の8月S&PグローバルPMI速報値に注目が集まります。インフレ指標では、24日(木)の新規失業保険申請件数(8/19の週)、25日(金)のミシガン大学調査の8月消費者マインド確報値での期待インフレ率が重要です。

今週のPoint2. 23日(水)のエヌビディア決算

今週も、小売や情報技術関連企業の2023年5-7月期決算発表が続きます。中でも、23日(水)引け後に発表が予定されるエヌビディアの決算には注目したいと考えます。当社の株価は2022年末比で約3倍(2.96倍,8/18時点)にまで上昇しており、当社を含む生成AI関連や半導体関連は、米国株全体をけん引するテーマとなっています。決算発表では、5-7月期の実績に加え、8-10月期見通し、AI関連の今後の市場動向などについてのジェンスン・ファンCEO(経営最高責任者)の見解に注目したいと考えます。

今週のPoint3.週末のジャクソンホール会合

金融政策関連では、FRB(米連邦準備理事会)幹部の講演が複数予定されています。24日(木)~26日(土)にカンザスシティー連銀主催の経済シンポジウム、いわゆるジャクソンホール会合が開催されます。パウエルFRB議長は25日(金)に経済見通しについて講演する予定です。

(以上、「1分で読める今週の米国株」)

もっと知りたい!経済指標&金融政策

ジャクソンホールは何に注目?「中立金利」の議論

目先1か月で、もっとも大切なイベントは9月19日(火)-20日(水)に開催される9月FOMCです。同会議ではドッツ(政策金利見通し)の2024年末分以降が上方修正され、FOMCによる利下げの想定が市場予想よりも小幅なものとなる可能性があります。

このため、市場は9月FOMCまで不安定な展開が続きそうです。その間は、FRBからの情報発信やFRB高官の発言が注目を集めると想定されます。先週は、NY連銀の経済ブログ(投稿は8/9及び8/10)における自然利子率(r*)についての議論が話題になりました。自然利子率は、景気・インフレを加速も減速もさせない金利水準を指します。(大幅利上げに対して、米国経済が堅調に推移していることを説明する理由に対する関心が強まる中で)同ブログでは「短期的な自然利子率はコロナ後に上昇した可能性がある」との見方が示され、注目を集め、株価へは重石となりました。一方、「長期的な自然利子率が上昇した証拠は弱い」との結論も示しています。ドッツに対する示唆としては、手前の予想期間での見通しは上方修正されやすく、長期水準の見通しは上方修正されづらいと解釈されます(小清水ストラテジスト)。

24日(木)~26日(土)に開催されるジャクソンホール会議の各セッションではコロナ禍前後での中立金利水準の変化が討議されると考えられます。各セッションは反対意見を持つパネリスト同士が討議するため、両論併記となり、いずれかの結論が示されることまでは想定しづらい形式です。一方、市場では中立金利が引き上がったとの見方が既に強まっており、今回の討論もそのような見方を補強する材料として捉えられる可能性があります。米長期金利が上昇すれば、米国株にとって重石となることから注意が必要です。

もっと知りたい!決算発表

先週から5-7月期決算発表が始まっています。今週は23日(水)のエヌビディアの決算発表に注目が集まります。

先週の半導体製造装置大手の決算発表は好調

17日(木)に半導体製造装置大手のアプライド・マテリアルズが決算を発表しました。年初から大きく株価が上昇した半導体セクターに対する高値警戒感が広がる中で、実績・見通しともに市場予想を上回る好決算で、発表翌日の18日に株価は上昇しました。半導体製造装置と半導体メーカーの業績は必ずしも連動はしないものの、上流工程である製造装置の最大手が受注も含め好調であったことは、半導体セクターの安心材料となりました。

エヌビディアの前四半期決算を振り返り

上記の通り、エヌビディアの2-4月期決算発表では、最大セグメントであるデータセンター向けが生成AI需要を取り込み前年同期比でプラスとなり、市場予想も大きく上回りました。また、5-7月期の見通しが市場予想を54%上回り、前四半期比で再拡大する見通しを示したことも株価上昇の一因となりました。

5-7月期決算発表のポイント

まずは、前回決算発表時に大きく引き上げた5-7月期会社見通しを、超えられるかが注目となります。また、6-8月期を通じて成長軌道を維持し得るかも重要でしょう。IT投資自体は抑制傾向にありますが、マイクロソフトやアマゾン・ドットコム、アルファベットといった大手クラウド事業者は自然言語処理やレコメンドエンジンなど内外の作業用に、当社の最新GPU「H100」の導入を増やそうとしています。また、メタ・プラットフォームズはメタバース推進のため積極的なインフラ投資を続けており、これも当社製GPU の需要を押し上げるとみられます。こうした需要の恩恵を実際に受けられているか、注目が集まります。

AI関連の技術は日進月歩で変化しており、スーパーコンピューター並みの仕様で建設される現在のデータセンターが未来永劫使われ続けるとは限りません。当社も含め社会実装の現場にいる企業のコメントによく目を配りながら、投資に活かしていく局面と考えます。

(FINTOS!外国株 小野崎通昭)

ご投資にあたっての注意点