インバウンドが着実に回復

2023年5月以降、新型コロナに対する日本の水際対策が緩和されたことにより、訪日外国人客数は順調に回復しています。地域別でみると、韓国や米国からの訪日客数はすでにコロナ禍前の水準を上回っています。

(注)データは月次で、直近の値は2023年7月。
(出所)JNTO(日本政府観光局)より野村證券投資情報部作成

インバウンド消費はモノからコトへ

足元の訪日外国人一人当たり旅行支出は、20.5万円となり、コロナ禍前に比べると5万円高くなっています( 下グラフ参照)。背景には、円安進行が大きな要因として挙げられます。また、一人当たり旅行支出を項目別に分解すると、飲食費や宿泊費の支出が増加しています。日本への旅行が割安になり、滞在期間が長期化したことなどが要因とみられます。また、娯楽等サービス費としての「テーマパーク」や「現地ツアー・観光ガイド」などの支出が増え、買物代が減少しています。これは、訪日客の嗜好がコト消費(体験)重視へと変化している可能性があります。

(出所)観光庁資料、野村證券経済調査部より野村證券投資情報部作成

中国からのインバウンドによるモノ消費に期待

訪日客のモノ消費(買物代)回復の鍵を握るのが、中国からの訪日客の増加です。2019年において、訪日中国客1人当たりの消費支出の50%以上は買物代であり、多くのお金がモノ消費に使われていました。訪日中国客数は、2023年7月時点で31.3万人と、2019年の同月の3割程度までしか回復していません。2023年8月10日に、中国政府による日本を含む海外団体旅行の規制が解禁されました。今後、中国からの訪日客が回復すれば、小売業や百貨店などでその恩恵が大きくなりそうです。

ご参考:インバウンド関連銘柄の一例

・寿スピリッツ(2222)

大手菓子製造販売会社。国内主要都市空港において、「ルタオ」、「東京ミルクチーズ工場」などの主力ブランドでの卸販売に注力している。

・J.フロント リテイリング(3086)

2007年に(株)大丸と(株)松坂屋HDが経営統合して発足した。コロナ禍前の2018年にインバウンド顧客に対応したモバイル決済が可能な売場の対象拡大などを行っている。

三越伊勢丹HD(3099)

百貨店事業は、売上高の約8割を占めるコア事業で、国内に伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店、三越銀座店など20店舗を展開している。主力店舗には、免税カウンターや、外貨両替機などが設置されている。

オリエンタルランド(4661)

入園者数世界有数の東京ディズニーランド、ディズニーシーを運営している。

資生堂(4911)

国内化粧品最大手で、近年は空港・免税店などトラベルリテールのチャネルにも注力している。

パン・パシフィック・インターナショナルHD(7532)

中核業態であるドン・キホーテでは、人気商品案内の多言語対応や、化粧品・食品・医薬品などの免税サービスなどインバウンドへの取組みを積極的に行っている。

サンリオ(8136)

ハローキティを中心としたキャラクター・コンテンツ会社で、テーマパーク「ピューロランド」を運営している。

東海旅客鉄道(9022)

訪日外国人に人気のエリアを対象とした周遊きっぷなどを販売している。

西武HD(9024)

鉄道事業に加えて、「プリンスホテル」など国内で50のホテルを運営している。

日本航空(9201)

国際線を中心に能力増強を積極的に進めるなど、外国人旅客の取り込みに注力している。

ANAHD(9202)

国際線の規模拡大を進めている。傘下にLCC(低コスト航空会社)のピーチを保有する。

共立メンテナンス(9616)

1993年にホテル事業へ参入した。ビジネスホテル(ドーミーインなど)は16,435室、リゾートホテルは4,193室を有している(2023.3期末)。

(注1)全てを網羅しているわけではない。(注2)HDはホールディングスの略。
(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成

(野村證券投資情報部 澤田 麻希)

※画像はイメージ。

ご投資にあたっての注意点