Q:社債1万円から取引可能に、どう変わる?

三菱UFJ信託銀行とNTTデータがブロックチェーン(分散型台帳)技術を使って1万円単位で社債を売買できるインフラをつくるとの報道がありました。この技術の普及で、個人投資家による社債への投資が増えると思いますか?

A:個人投資家に恩恵、一般化にはハードルも

報道の内容が実現した場合、社債の発行・売買に伴う、受渡・決済・名義記録等のオペレーション業務が簡素化され、バックオフィス業務のコストの低減につながり得ると見込まれます。また、取引単位が引き下げられれば、一般的に個人のお客様が投資しやすくなる効果があると考えられます。

一方、社債の投資や取引では、株式と異なる点があります。

1) 株式は取引所取引であるのに対し、社債は店頭取引(相対取引)である。このため、流通市場での売買は金融商品取引業者(証券会社)を相手に行う必要があり、証券会社が社債の流通段階でビッド・オファー価格を提示し、在庫リスクを負う等のフロント部門のコストを負担するため、取引コストの低減には限界がある。

2) 株式はその性質上、投資リターンのアップサイドを期待し得るが、通常は満期に額面で償還される社債はアップサイドが限定される。つまり、ローリターン型商品である。

社債は、上記の特性から、取引コスト控除後のリターンの魅力は低く、小口化されるほど単位当たり取引コストが重くなりコスト勘案後リターンも悪化しやすいため、大幅な小口化には不向きな商品と言えます。このため、最低取引単位が制度上、1万円に引き下げられても、実際に最低取引単位が1万円の社債への投資需要が増える、また企業側にこうした社債の発行意向が多く出るとは限りません。従って社債の場合、株式と同様に、売買単位が低下することで個人のお客様の投資がより一般的になる、とは直ちには期待しづらい面があります。

(出所)野村證券市場戦略リサーチ部より野村證券投資情報部作成

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