電力アグリゲーターという新しいビジネス分野が注目されている。

足元では、時間帯や季節による発電量変動が激しい風力発電や太陽光発電が増加し、工場、ビル、住宅など需要家での分散型発電や蓄電池の設置が進展している。その中で、従来は川上工程から川下工程への一方通行であった電力供給の流れが変化し、発電、送配電、電力小売の既存3分野に続く第4の分野として、電力アグリゲーターが登場している。

電力アグリゲーターが新たに担う役割は、小口発電の集約、蓄電池の充放電制御、データ分析を通じて、需要家へ最適な電力供給を行うことである。リアルタイムでの遠隔制御、高精度な気象予測、人工知能などデジタル技術の活用が必須である。

事業環境面の追い風として、再生可能エネルギー(再生エネ)の固定価格制度の一巡で、再生エネ由来の電力を発電事業者から需要家へ直接販売する契約形態(PPA)が普及し始めたことが挙げられる。

電力アグリゲーターのビジネスモデルは、川下工程の需要家側から川上工程への新しい働き掛け(電力利用時間シフトや蓄電池制御)を支援するタイプと、川上工程である再生エネ発電を集約して川下工程の需要家へ供給するタイプに二分できる。

現状では、電力アグリゲーターへの参入事例は限定的である。前者のタイプでは、大手の電力会社やガス会社などが既存事業の周辺分野として取り組む事例があるが、後者のタイプは新規事業の色彩が強く、大手企業とベンチャー企業を合わせても参入企業が数社に留まっている。

再生エネ発電の大量導入を下支えする役割が期待される電力アグリゲーターは後者のタイプである。再生エネによる環境価値を取引する電力供給契約として注目され、再生エネ拡大への寄与が見込まれるバーチャルPPAでは、このタイプの電力アグリゲーターが仕組みの構築や電力の需給管理を担う必要がある。最近、建設が進んでいる系統用蓄電所の運用や遠隔制御でも、同様の役割が期待される。

デジタル技術の活用では、大手企業が必ずしも優位と限らない。需要家の細かなニーズへの対応を得意とするベンチャー企業が、この分野で活躍することに期待する。

(野村證券フロンティア・リサーチ部 高橋 浩明)

※野村週報 2023年9月4日号「新産業の潮流」より

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