米国の多くの大学基金では在学生や卒業生等から受け取った寄付金を元手に、大学のミッション(現在と将来の学生を平等に支援=世代間公平性)実現に向けて長期運用を行っている。運用の特徴として、オルタナティブ(代替)投資に積極的、高いパフォーマンスを挙げている、等の認識があるかもしれない。しかし、これらは主に資産規模の大きいハーバード大学やイェール大学での特徴であり、基金規模によっては資産配分やパフォーマンス動向も異なる。

たとえば、資産規模が0.25億ドル以下の基金では資産の約6割を株式が占めており、オルタナティブは約1割となっている(下図)。先ほど例に挙げた2校は10億ドル以上の区分に含まれ、その規模の大きさゆえに全体の平均値に大きく影響していることが分かる。このような配分の違いはパフォーマンスにも表れており、オルタナティブ比率の高い大規模基金の方が過去1年だけでなく過去10年とより長期でも高いリターンを獲得している。

現時点ではコストの高さや流動性の低さ、さらに専門人材の不足等から小規模基金ではオルタナティブ比率が低くなっているが、今後は資産分散と長期リターンの獲得に向けて拡大を検討している。

米国大学基金の運用は長期投資家として国内の個人投資家からも注目されているが、上記のように基金規模によって運用状況は異なっている。そのため、平均値や大規模基金の動向のみでなく、小規模基金の今後の動向に注目することも参考になる点が多いのではないだろうか。

(野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティング 吉田 葵)

※野村週報 2023年9月4日号「資産運用」より

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