レアメタルとは

レアメタルとは、「地球上の存在量が稀であるか、技術的・経済的な理由で抽出が困難な金属のうち、安定供給の確保が政策的に重要な金属」と経済産業省は定義しています。また、レアメタルに加えて、ベースメタルや非金属鉱物資源の中でも、銅やグラファイトなど需要が強いものを合わせて重要鉱物としています。レアメタルには、EV(電気自動車)のバッテリーやモーターに用いられるニッケルやリチウム、コバルト、ネオジムなど31鉱種が対象となっており、今後の需要拡大が見込まれます。

(注)指定される鉱種は国・地域ごとに異なる。賦存量とは、理論的に算出可能な潜在的資源量。
(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成

(出所)IEA「The Role of Critical World Energy Outlook Special Report Minerals in Clean Energy Transitions」より野村證券投資情報部作成

供給面には課題も

レアメタルの多くは中国で産出されていますが、シェアの高さを政治的交渉の要素とし、供給を抑制させるリスクには注意が必要です。足元でも、日米蘭による先端半導体製造装置の対中輸出規制強化への対抗策として、レアメタルを輸出規制対象に追加するなど、緊張感は高まりつつあり、サプライチェーンの脱中国化が急がれています。ほかにも、資源ナショナリズムの高まりや労働環境の過酷さ、モラルの低い労務管理などが国際的に問題視され、供給を増やすことが困難な状況にあり、将来的に供給不足に陥る可能性が危惧されています。このように、レアメタルは需要の拡大が見込まれる一方、供給面では解決すべき課題が山積しています。

レアメタルの安定供給に向けて

各国・地域では、レアメタルの安定供給のため自国内での探鉱・開発・生産や権益獲得を支援しているほか、一定の備蓄を確保することで安定的な供給を目指しています。また、使用量の低減や代替材料の開発を支援することで、レアメタルそのものに対する依存度を低減させる取り組みも進んでいます。ほかにも2023年5月のG7サミット(注1)では、レアメタルの国内外でのリサイクル推進についての文言が首脳宣言に記載され、G7として130億ドル(約1.9兆円(注2))を財政支援することが決定されるなど、様々な角度からレアメタルの安定供給に向けた取り組みが行われています。

(注1)主要7ヶ国首脳会議。(注2)2023年8月21日時点の1米ドル=146.22円で算出。

(注1)割合は2024年以降、毎年10%ずつ段階的に増加し、2027年には80%となる。
(注2)全てを網羅しているわけではない。
(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成

ご参考:レアメタル関連銘柄の一例

・三菱マテリアル(5711)

廃基板類を回収・処理し、金属資源への再生を手掛ける。処理量は世界最大級。コバルトの生産に着手しており、2023年度に実証実験開始、2027年度の事業化を目指す。

・住友金属鉱山(5713)

リチウムイオン電池の正極材の世界大手。ニッケルは調達・製錬・加工まで自社内に供給網を有する。2028年にはリチウムの生産を開始する予定で、低純度の原材料から高効率で抽出可能な独自技術の開発が進んでいる。

・DOWA HD(5714)

廃リチウムイオン電池からコバルト、リチウムなどを回収しており、月間600トンの処理能力を有する。

パナソニック HD(6752)

世界で初めてコバルト含有量5%以下のリチウムイオン電池を実現しており、技術的にはさらに低減可能としている。また、正極材のレアメタルは再生材へ転換を進めている。

トヨタ自動車(7203)

リチウムイオン電池と比較して、レアメタルの使用量を低減可能なフッ化物イオン電池の開発に取り組んでいる。

丸紅(8002)

2021年に米Retriev Technologies社、2023年には米Cirba Solutions社と提携し、廃リチウムイオン電池のリサイクル事業へ参画している。

住友商事(8053)

調達元や生産過程を明らかにするためにレアメタルをサプライチェーン上で追跡できるサービスの展開を予定している。

アルベマール(A1079/ALB US)

リチウムの生産で世界最大手である。チリ、米国、オーストラリアで生産を手掛けている。

ソシエダード・キミカ・イ・ミネラ・デ・チリ ADR(A5585/SQM US)

チリを代表する化学メーカーで、工業用ケミカルのヨウ素やリチウムを手掛けている。世界100ヶ国以上で商品を販売している。

(注)全てを網羅しているわけではない。HDはホールディングスの略。外国株式のコードは、野村コード/ブルームバーグコード。
(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成

(野村證券投資情報部 吉留 海)

※画像はイメージ。

ご投資にあたっての注意点