Zホールディングス(4689) 情報・通信

構造改革が進展し新経営戦略を発表へ

2023年4~6月期は業務委託費や販促費など105億円の経費効率化を行い、赤字事業の売却・撤退による利益増効果は66億円となった。このため、調整後EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)は前年同期比16%増益の1,000億円に達した。

今期は7~9月期以降も業務委託費の削減や新規採用の停止など、経費効率化が進展する見通しである。また、赤字事業の更なる構造改革も期待できよう。

23年10月にはヤフー社とLINE 社の合併会社が発足し、新たな中期経営戦略が発表される予定である。ここでは、各事業の経営指標、利益目標、資本政策などが注目点となろう。

戦略、コマース、メディア事業の増益要因

戦略事業の調整後EBITDA は24.3期の173億円の赤字から25.3期に71億円の黒字転換が予想される。構造改革効果のフル寄与に加え、社会インフラとして定着したPayPayの連結EBITDAは24.3期の41億円から25.3期は194億円へ拡大しよう。

コマース事業では、23年11月新設予定のLYP プレミアム会員へLINE 顧客が移行し、ヤフーショッピング取扱高へのプラス効果が見込まれる。

メディア事業では、23年6月にLINE 公式アカウントで有料プラン移行を促進する料金体系変更を行っており、今後は有償アカウント数増加による広告収入増が予想される。

(野村證券エクイティ・リサーチ部 増野 大作)

三菱商事(8058) 卸売業

24.3期も利益水準は高い

原料炭やLNG(液化天然ガス)などの資源事業の他、自動車や食品事業にも強みを持つ総合商社。2023.3期はウクライナ紛争で商品市況が大きく上昇したことで資源分野の業績が好調だった。非資源分野でも新型コロナ影響による物流の混乱もあって幅広い分野で供給不足に陥ったことからトレード事業の利益率が改善した。24.3期は新型コロナ影響の緩和もあって、前期好調の反動は出ているが、4~6月期(1Q)の親会社株主利益は3,177億円と新型コロナ前の水準を大きく上回るなど高い利益水準が続いている。なお、1Q 実績の24.3期通期計画に対する進捗率は35%と計画に対しても順調な滑り出しとなった。

キャッシュ創出力の高さは際立つ

好調な業績動向に加えて資産売却に伴う資金回収もあって1Q 決算でのフリー・キャッシュ・フロー(純現金収支)が5,500億円の黒字となるなど、他商社との比較でキャッシュ創出力の高さが際立っている。商社各社に対しては、株式市場からの株主還元に対する期待が強いが、当社はキャッシュ創出力の高さを背景に株主還元余力が大きい。また、当社は業種内で唯一財務レバレッジに関して適正水準を投融資レバレッジ(投融資残高に対する資本と有利子負債の関係)として開示している。1Q末の投融資レバレッジは26.9%と、適正とする40~50%を下回る水準であり、追加的な株主還元施策に期待したい。

(野村證券エクイティ・リサーチ部 成田 康浩)

ユニ・チャーム(8113) 化学

アジアNo.1の不織布・吸収体メーカー

子供、大人用紙おむつや生理用品等の不織布・吸収体製品でアジアトップシェアを有する企業。海外事業が業績を牽引しており、2022.12期の海外売上高比率は66%。現地の生活スタイルや商習慣に合わせた事業展開に強みを持つ。

近年の当社業績は、フェミニンケア、ウェルネスケア、ペットケアの高収益カテゴリーが牽引している。これらはベビーケアと対照的に対象人口等の拡大に伴うニーズの多様化から高付加価値化が進みやすい。当社は高いシェアや現地ニーズへの対応力の高さを背景に少子高齢化等による市場成長の恩恵を取り込み、収益性向上を伴う業績成長が可能と考える。

価値転嫁が浸透、原材料安も追い風に

23年4~6月期コア営業利益は前年同期比19%増の303億円。国内はベビーケアやペットケアを中心に海外と比較して出遅れていた価値転嫁が浸透。成長鈍化が懸念されていた中国もフェミニンケアが伸長し、国内外事業とも同約20%の増益となった。

7~9月期以降も日本初の妊活用おりものシート等、秋の新製品での継続的な単価向上の取り組みによる収益性改善が続こう。また、原油価格等の下落による原材料安も見込まれ、24.12期にかけて業績面での恩恵が享受できよう。野村では23.12期のコア営業利益を前期比16%増の1,385億円、24.12期を同15%増の1,590億円と2桁の増益が続くと予想している。

(野村證券エクイティ・リサーチ部 大花 裕司)

※野村週報 2023年9月11日号「銘柄研究」より

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