1分でわかる今週の米国株

先週は、原油価格上昇や市場予想を上回る米経済指標が散見されました。FRB(米連邦準備理事会)による金融引き締め政策の長期化への懸念が再燃し、米長期金利(10年債利回り)が上昇しました。米長期金利の上昇を受け、米国株3指数は前週末比で下落しました。

今週のPoint1. 「沈黙期間」に入る中、CPIが相場の焦点に

19日(火)-20日(水)に開催される9月FOMC(米連邦公開市場委員会)を前にFRB幹部は沈黙期間(金融政策に関する公の発言を自粛する期間)に入っており、経済指標の内容によっては、金融政策に対する思惑で株式市場が大きく反応することも考えられます。

今週、市場が最も注目する経済指標は13日(水)の8月CPI(消費者物価指数)でしょう。市場は総合指数で前年同期比+3.6%と7月の+3.2%から再加速を想定しています。市場予想の+3.6%(あるいは、エネルギーと食品を除くコア指数の市場予想である+2.2%)からの上振れは株価の重石に、下振れは株価の支援材料になり易いでしょう。

今週のPoint2.インフレを加速させ得る原油価格の上昇

足元では産油国の減産などにより原油価格が上昇、WTI原油価格は87ドル前後で推移しています。原油価格の高騰はインフレ率の上振れ要因となるため、上昇が続けば、過去の数字である(8月の)CPI以上に注目を集める場面があるかもしれません。野村の大越シニア・エコノミストは、2022年の原油価格動向を振り返り「ウクライナ紛争勃発に絡んだ暴騰から原油価格が下落した後、WTI原油価格が90ドルを超えた局面が2回ある」※と指摘します。

※10月の中国共産党大会を前に、党大会後にゼロコロナ政策が解除されるとの期待が高まった/11/11(金)に中国が20項目の制限緩和措置を発表する前に、ゼロコロナ政策解除期待が高まった

「足元の環境も踏まえると、今後WTI原油価格が90ドルを超えて安定する、あるいは更に上昇するためには、中国の不動産セクターに対する有効なてこ入れ策が講じられ、中国景気が改善して一定の成長を続けられるような景気対策が追加実施される必要がある」と分析しています。減産が続く中で中国景気の底入れが確認されれば、さらなる原油価格上昇も想定されます。

今週のPoint3. “1ヵ月早い”アドビ、オラクルの決算が大手ハイテク業績の試金石に

米国は早くも6-8月期決算発表が本格化します。6-8月期決算企業数はS&P500企業ベースで全体の4%にすぎませんが、最も企業決算が集中する7-9月期決算(同、全体の89%)における業績を見通す上では重要な情報となります。足元の注目は11日(月)引け後発表のオラクルと、14日(木)引け後発表のアドビで、いずれも顧客企業のクラウドやソフトウェア投資の意欲を見る上で注目が集まります。

12日(火)にはアップルが新型iPhoneを発表する見込みです。中国による政府職員のiPhoneの使用規制が発表され、同社の株価は前週末比で約6%下落しています。新型iPhoneの発表そのものが中国における規制懸念を払しょくすることにはならないと思われますが、株価の底入れ材料の一つになるかは市場の関心事項と言えるでしょう。なお、2023年4-6月の売上高で見て、同社の大中華圏の売上高比率は約2割を占めていました。

(ここまで、「1分でわかる今週の米国株」)

(FINTOS!外国株 小野崎通昭)

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