近年ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)が注目されている。ソーラーシェアリングは農地に2m以上の支柱を立てて上部空間に太陽光発電パネルを設置し、太陽光を農業生産と発電とで共有する画期的な取組である。太陽光発電は温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーであり、電力と作物を販売することで農家の収入が向上できる。また荒廃農地や耕作放棄地の農業の再生にも貢献できることから、自治体や民間の検討が盛んである。

ソーラーシェアリングは、日本の地理的特性に合致している。日本は国土の約7割が山地や丘陵地であり、農地や商業地、工業地、住宅地が狭い平野に集中している。また、農地面積は国土全体の約12%に過ぎない。国民一人当たりの農地面積は同じ島国の英国が2,960㎡/人である一方、日本は8分の1の370㎡/人に留まる。

2005年の「京都議定書」の発効以降、農地や農産物はエネルギー生産の場としてもグローバルで注目を集めている。これには農地での太陽光発電の他、トウモロコシなどの農作物を醗酵する燃料用のエタノール製造がある。熱帯地域と比較した場合、日本は太陽光という自然環境でも農地規模という点でも圧倒的に不利である。加えて、農作物の光合成による変換効率は1%程度と言われ、変換効率が20%を超える太陽光発電パネルとは雲泥の差がある。日本の地理的特性を踏まえると、農地を利用した太陽光発電の利点は大きい。

これまで日本では、東日本大震災以降、大規模な太陽光発電所の開発が相次いだ。しかし、地域環境との調和という観点で反対されることもあり、新規開発の速度は近年鈍化している。一方で、エネルギーの効率的活用、地域活性化等の観点から、エネルギーの地産地消が求められており、農地を活用したソーラーシェアリングの導入に向けた検討が加速してきている。日本では工場や物流施設、商業施設など電力の需要家の周辺に農地が広がる地域が多い。ソーラーシェアリングにより農家が農地で発電しながら、需要家に直接電力を供給することが可能となる。太陽光発電の真下で如何に栽培効率を高めるか等の課題はあるが、周辺環境を含む適地を選定すれば、新たな日本の農業の取り組みとして世界的にも注目されるだろう。

(野村アグリプランニング&アドバイザリー 廣井 淳)

※野村週報 2023年9月18日号「アグリ産業の視座」より

※掲載している画像はイメージです。

【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら

ご投資にあたっての注意点