銀行株にはアウトパフォーム余地ありか

先週、日銀の植田和男総裁のタカ派的(金融引き締めに積極的)発言に注目が集まり、円金利が大幅に上昇しました。しかし、日本株の下落は限定的でした。日銀タカ派化への耐性が強まっているように見える背景には、ヘッジファンドなどの投機勢の動きが影響していると考えられます。

一つ目のポイントは、相場の流れに追随するCTA(商品投資顧問)の動向です。CTAは8月末からロングポジション(買い持ち高)の再拡大に転じ、先週も先物を2,000億円弱買い越しました。日経平均株価が32,000円を下回らない限り、このトレンドは続く可能性が高いとみます。CTAは、相場のトレンドの強弱に応じて機械的に取引するので、日銀の金融政策の影響を受けにくい性質があります。

二つ目は、(経済情勢に基づいて売買する)マクロ系ヘッジファンドの動きです。マクロ勢も8月末からロングポジションの拡大を続け、先週は先物を3,000億円程度買い越しました。マクロ勢の日本株ポジションは、中国景気と連動し、CTAほどではないですが相場のトレンドに追随します。中国景気の安定の兆しと、日本株の持ち直しが、マクロ勢の強気の背景と考えられます。

加えて、足元では、日銀のタカ派化が日本株の売り材料とはなっていないようです。7月の日銀会合はタカ派的サプライズとなりましたが、会合後もマクロ勢は日本株のロングポジションを小幅ながら維持していました。

しかし、日銀のタカ派化は、一部のセクターには大きな影響を及ぼしています。先週、円金利の上昇を背景に、銀行株のアウトパフォームが顕著となりました。今週の日銀会合がハト派的(金融引き締めに消極的)サプライズにならない限り、銀行株はさらにアウトパフォーム傾向を強める可能性があります。これは、10年国債金利が0.65%を超えない限り、CTAが円債のショートポジション(売り持ち高)の拡大を継続する可能性が高いためです。

(FINTOS!編集部)

要約編集元アナリストレポート「野村クオンツ・インサイト – 日銀タカ派化への耐性を強める日本株市場(2023年9月19日配信)」(プレミアムプラン限定)

(注)画像はイメージ。

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