生成系AI(人工知能)の普及により、データセンター(DC)の光化が加速しよう。

生成系AIの使用時には、背後で大量の計算が行われる。文字で入力された質問・要望は、クラウド処理のためにDC へ送られ、DCで高度なAI 処理がなされる。

DC では、AI が質問・要望の文章を分析したうえで、回答の文章あるいは画像データを生成する。AIは、あらかじめ既存の情報で深層学習を行った巨大なデータベースを使って、入力された文字情報の内容を理解しているかのような回答を作成する。分析とデータ生成を行うため、文章での回答であっても膨大な計算が必要となる。

この計算処理のため、DC ではAI 処理ボードを何枚も搭載した高性能サーバを多数使う。現在の生成系AI の開発は100億円単位のサーバ投資が推定され、次世代開発では1,000億円単位とも言われる。

生成系AIの利用者は、質問・要望の入力後、AI の回答を待つ。迅速な回答には、DC での計算の高速化が必要である。これには、IC(集積回路)の性能向上に加え、データ伝送の高速化という方法がある。

現状、DC 内のネットワークの一部には銅回線が残っている。これを光ファイバ回線に置き換えれば、データ伝送を高速化できる。さらに、サーバ内部のボード同士の接続も、光ファイバへ変わりつつある。

近年、1枚のボード上に、電気が通る銅配線に加え、光が通る光配線(導波路)を設けるシリコンフォトニクスと言われる技術が出てきた。光ファイバとボードの接続部分だけでなく、ボード上のIC間も光配線でのデータ伝送により高速化ができる。さらに、IC内部に光配線を用いる光電混載ICの開発も進められている。

光配線では、データ伝送に伴う電力消費量を銅配線の100分の1に削減できる。DCと発電の将来予測から、2050年にはDC の電力消費が全世界の発電量の10倍以上になるとの試算もある。これに生成系AIのためのDC需要も加わるため、DCの光化は脱炭素の観点でも必要である。

DC の光化が加速することによって需要が拡大する要素技術として、光信号を電気信号へ変換する光電変換やシリコンフォトニクス、光電混載ICなどが挙げられる。こうした光と電気の融合領域は、生成系AI関連として注目したい。

(野村證券フロンティア・リサーチ部 小澤 育夫)

※野村週報 2023年9月25日号「新産業の潮流」より

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