米国の利上げが最終局面入りしており、比較的堅調な経済を背景に米国の金利は上昇、ドル高傾向となっている。一方、日本は金融緩和継続で円安傾向が続き、ドル円は1ドル=147円台へ上昇し、年初来高値を更新した。

主要新興国はコロナ禍後にいち早く利上げに踏み切ったことで、経常収支など経済ファンダメンタルズ(基礎的条件)が比較的健全な国々の通貨は対ドルで堅調、対円で上昇した。

エネルギー価格の下落などからインフレは鈍化傾向となり、これらの新興国では金融政策の姿勢に変化が表れている。ブラジルでは2022年9月会合以来、7会合連続で政策金利を据え置いたが、23年8月会合で利下げに転じた。野村では、インドやインドネシアは金利据え置きから24年前半に利下げに転じると予想している。メキシコでは23年8月会合まで3会合連続で政策金利を据え置き、今後の据え置き継続を示唆した。ただし、23年10~12月期の利下げ転換が市場の見方である。

これまで、主要新興国は利上げが通貨の上昇要因となっていたが、利上げが終了し、利下げ開始に向かう局面はこれら通貨のトレンドに変化をもたらすだろうか。

ブラジルレアルやメキシコペソは比較的堅調な値動きとなっている。その主因は実質政策金利(政策金利-物価上昇率)の水準が高いことにある。利上げを続けたことで政策金利は高水準となり、同時にインフレ鈍化が進んだため、利下げを開始しても比較的高い実質政策金利が通貨の下支えとなるだろう。

特に、メキシコでは半導体不足解消による自動車生産の回復に伴い、足元の景気は堅調で、在外メキシコ人による本国への送金総額や直接投資は高水準であり、ペソの下支えとなっている。

20年7月に発効した米国・メキシコ・カナダ協定や米中対立による北米域内のサプライチェーン(供給網)の再構築、ニアショアリング(生産拠点を消費地に近い国に移転すること)の動きの中で、メキシコへの注目度は上がっている。23年には米大手自動車メーカーのEV(電気自動車)増産や世界最大の電気自動車メーカーの進出などが発表された。メキシコへの投資魅力が高まっていると言えよう。

(野村證券投資情報部 岩崎 晴弥)

※野村週報 2023年9月25日号「投資の参考」より

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