ユーロ圏でインフレ率の減速が継続している。9月29日に公表された9月ユーロ圏HICP(消費者物価指数)の速報値は前年比+4.3%と、前月の+5.2%から大きく減速し、2021年10月以来の伸び率まで縮小した。振れの大きい食料品、アルコール、タバコ、エネルギーを除いたコアHICP の前年比も+4.5%と、22年8月以来の伸び率にまで低下している。

内訳を子細にみると、最近のインフレを牽引してきたサービス価格の前年比上昇率(+4.7%)が前月(+5.5%)から大きく減速したほか、財価格の前年比伸び率の縮小も継続している。昨年6月から8月にかけてドイツ政府が公共交通料金の値下げやガソリン減税を行っていた反動が今月から剥落した影響も大きいが、フランス等のインフレ率も前月から減速しており、ユーロ圏全体で物価上昇圧力の緩和が進んでいることが示された格好だ。

この結果によりユーロ圏の7~9月のインフレ率は前年比+5.0%となり、欧州中央銀行(ECB)が9月の政策理事会で示した最新の物価見通しと一致した。最近の市場では原油価格が上昇する中、インフレ率の上振れ観測が俄かに高まっていたものの、そうした懸念をいったん後退させる内容だったと言えよう。

もっとも、インフレ率は依然としてECB の目標の2%を大きく上回っている。ECB の最新の見通しではインフレ率が2%にまで戻るのは25年7~9月期となっており、今後もインフレ率の減速が継続するかは、原油価格の動向を含め引き続き注意深くみていく必要があるだろう。

(野村證券市場戦略リサーチ部 茂木 仁)

※野村週報 2023年10月9日号「経済データを読む」より

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