決算発表シーズンでのバリュー株の調整を予想

2023年6月に始まった低PBR(株価純資産倍率)銘柄の高パフォーマンスは、9月後半以降やや低迷しています。ここ数年のバリュー株のパフォーマンスは、米国金利の影響を強く受けてきました。足元の低迷は、低PBR銘柄が9月前半に米国金利上昇を上回るペースでアウトパフォームしたことに対する調整のようにも見えます。今後のバリュー株のパフォーマンスに関しては、引き続き米国金利の影響を受けやすいものの、(1)為替による影響の増大、(2)業績への懸念、(3)目標リターンの低下、により下落リスクが高まると予想します。

(1)為替による影響の増大

最近、低PBR株に対する円安の影響が高まっています。背景には、低PBR株において外需銘柄が占める割合が上昇してることがあります。「素材・化学」が株価の低迷により低PBR化が進んでいるほか、代表的なバリュー株である「金融」の株価上昇による外需銘柄の相対的なPBR低下が影響しているようです。一方、足元では政府・日銀による為替介入への警戒などにより米国金利と為替との連動性が低下しています。当面は、米国金利が低下した場合には円高に進みやすいのに対して、米国金利が上昇しても円安になりにくい可能性があります。低PBR銘柄にとっては、株価の下落リスク上昇につながると予想されます。

(2)業績への懸念

グロース株とバリュー株とのバリュエーション(投資尺度)格差は、予想ROE(自己資本利益率)や予想売上高成長率と整合的な推移をしています。そのため当然のことですが、今後のバリュー株のパフォーマンスを占う上では、業績見通しも重要です。足元、バリュー株の業績見通しに関しては懸念材料があります。2023年度の第1四半期(Q1)決算は全体として堅調な結果であったにも関わらず、バリュー株では会社予想の下方修正が頻発しました。通常、企業は業績の下方修正を第2四半期(Q2)まで保留する傾向があるため、今後、バリュー株とグロース株との業績格差が広がる可能性があります。

(3)目標リターンの低下

目標リターン(IFISコンセンサス目標株価と実際の株価との乖離率)の観点からも、低PBR銘柄は相対的に下落リスクが高いと考えます。低PBR銘柄は目標リターンが低い傾向があるためです。目標リターンが低い銘柄は特に決算発表シーズンの株価パフォーマンスが低調となる傾向があります。Q2決算では目標リターンの低い銘柄でレーティングの引き下げが増えると予想します。決算発表シーズンにおけるバリュー株の株価押し下げ要因になりそうです。

(FINTOS!編集部)

要約編集元アナリストレポート「日本株クオンツストラテジー – バリュー株の高パフォーマンスは転換点に(2023年10月13日配信)」(プレミアムプラン限定)

(注)画像はイメージ。

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