ZOZO(3092) 小売業

「ZOZOTOWN」を運営

 当社は日本最大級のファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営する。2019年の国内アパレルのeコマース(電子商取引)市場規模約1.9兆円(経済産業省調べ)に対して、当社の19年度の商品取扱高は3,451億円で、市場シェア約18%と専門店サイトとしてシェア1位である。

 当社の強みは、①8,227の多数のブランド(21年3月末時点)が出店することで、②他のサイトにはないお洒落な商品を数多く取り揃えており、③システム、デザイン、物流倉庫など、e コマースに関わる機能も自前で保持していること、が挙げられる。また、日本最大級のファッションコーディネートアプリ「WEAR」も運営する。

「ZOZOCOSME」に注目

 直近の業績は好調である。21年1~3月期の営業利益は前年同期比22%増益の104億円となった。商品取扱高も同26%増と大きく伸びた。これはZOZOTOWN本店の伸びに加えて、ZOZOTOWN PayPayモール店が大きく拡大したことが理由である。

 野村ではZOZOCOSME(ゾゾコスメ)に注目する。当社が21年3月より新たに始めたコスメ専門のオンラインショッピングモールである。野村では22.3期の同サービスの商品取扱高を100億円と急速な立ち上がりを予想している。商品取扱高全体への貢献は約2%だが、取扱ブランド数の増加や認知度の向上で23.3期以降のさらなる成長に注目したい。

(長尾 佳尚)

テルモ(4543) 精密機器

好調な着地、2022.3期はコスト増

 2021.3期の売上収益は、米国心臓血管カンパニーが野村予想を約40億円上回るなど好調に着地した。

 新型コロナ禍でも米国カテーテル手技が回復基調にある証拠であり、22.3期には売上収益の高い成長が望める。22.3期会社計画上限の6,800億円は欧州の動向にかかる。早期にワクチン接種が進めば上限の予想に近付こう。中国・米州は会社前提もある程度の強気に設定したとのことである。

 22.3期営業利益会社計画についてはカテーテル類在庫圧縮と原料血漿採取事業の費用増が野村の想定外である。

 糖尿病事業では、インスリンポンプのMEDISAFE WITH™ が牽引役になろう。

ラジアル手技の普及

 米国ではASC(日帰り手術センター)でのカテーテル手術の機運が高まりつつあり、ACC(米国循環器学会)によるSDD(日帰り手術)のチェックリストが発表されるなど、ラジアル手技(手首からカテーテルを挿入する手技)が浸透し、TRI(循環器)の他、R2P(足)やRAVI(腹部)でも浸透する公算が大きい。またラジアル手技専用のプレミア価格帯製品群はTRIではアクセス製品に限られたが、R2P やRAVI では治療デバイスも含まれる。

 新型コロナ禍により空き病床確保の重要性が高まり、ラジアル手技が広まることで、当社の心臓血管カンパニーの中長期成長性は高まったと考える。

(甲谷 宗也)

日本製鉄(5401) 鉄鋼

業績V字回復

 粗鋼生産量で国内4割強のシェアで世界でも上位。自動車用鋼板を世界展開、高級シームレス鋼管でも世界有数の企業。

 2021年度の税引前損益は前年度の87億円の赤字から金融危機後最高の4,350億円の黒字を予想する。コスト削減効果に加えて、新型コロナ後の製造業の活動回復に伴い鋼材の販売数量が増加すると予想する。

 世界的に鋼材需給が逼迫しており、主要な製品群での採算改善も期待できる。中国や米国での活発な建設活動が鋼材需要を支える。中国は5月1日より鋼材輸出に対する付加価値税の還付を廃止した。アジアの鉄鋼貿易市場での需給引き締まりにつながり、当社の輸出にもプラスであろう。

CO₂排出削減に積極対応

 当社は3月5日に発表した経営計画で、高炉の休止を含む追加の生産能力の削減策を発表した。業績が回復に向かう中でのこの経営判断は、中期的な収益力強化を重視する経営姿勢の表れと高く評価できる。

 また、3月5日には日本の鉄鋼会社として初めて50年にカーボン・ニュートラル(CN)を達成する方針を示した。30年に大型電炉による高級鋼製造と高炉での部分的な水素還元に着手し、その後、100%水素直接還元による鉄鋼生産を実用化するなど、CN に向けた詳細な実現計画を示している。新しい製造技術を開発し、脱炭素社会の構築に積極的に貢献しようとする経営姿勢も評価したい。

(松本 裕司)

※野村週報2021年5月31日号「銘柄研究」より

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