持続的で安定的な2%インフレには時間を要する

日本銀行(以下、日銀)は2023年10月30~31日に金融政策決定会合(以下、決定会合)を開催し、YCC(イールドカーブ・コントロール、長短金利操作)の枠組みを維持しつつ、一部運営を修正することを発表しました。7月以降、10年物国債利回りについて1%を厳格な上限としていましたが、1%を上限の「目途」として位置づける変更を行いました。野村證券では、今回のYCC修正は限定的なものにとどまったと評価しています。同時に、日銀がYCCという枠組みの下で金融緩和を粘り強く進める意向であると解釈しています。

決定会合後、展望レポート(経済・物価情勢の展望)が公表されました。2023年と2024年度のコアCPI(生鮮食品を除く消費者物価指数)の前年度比変化率の見通しが大きく上方修正された一方、2025年度のコアCPIやコアコアCPI(生鮮食品・エネルギーを除く消費者物価指数)は2%を下回る見通しとなりました。特に、コアコアCPIは2024年度、2025年度ともに前年度比+1.9%と予想されており、2年連続で2%を下回ります。これらを踏まえると、野村證券では、今回の展望レポートは、賃金と物価の好循環に基づく持続的で安定的な2%インフレに対して、日銀が自信を強めたとのメッセージを含んでいないと解釈しています。

今回の決定会合を受けての野村證券の金融政策シナリオは以下の通りです。メインシナリオ(60%の確率)では、2024年10-12月期にYCCを撤廃し、2025年以降にマイナス付利を撤廃すると見ています。リスクシナリオA(20%の確率)は、従来2023年中のYCC撤廃を予想していましたが、時間が経過しているという技術的な理由で、「2024年3月までの撤廃」へ変更します。リスクシナリオB(20%の確率)では、景気の鈍化や物価・賃金上昇の持続性が低下するとの前提のもと、2025年以降にYCCとマイナス付利の撤廃を予想しています。

(FINTOS!編集部)

要約編集元アナリストレポート「日本銀行金融政策決定会合 – 限定的な修正にとどまったYCC(2023年10月31日配信)」(プレミアムプラン限定)

(注)画像はイメージ。

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