Q:中東緊迫化、金・原油は有効か?

中東情勢の緊迫をきっかけに金や原油価格が上昇しています。今後、金か原油を1年間で保有するとした場合の判断基準を教えてください。

A:世界景気上振れなら原油、下振れなら金か

2023年10月7日からの中東情勢緊迫化が金価格に与える影響には、金の安全資産需要としての直接的な影響と、「原油先物価格上昇→米インフレ率上昇期待→米長期金利上昇期待→金価格下落(金は金利がつかないため)」という間接的な影響の、2つの経路が考えられます。10月中旬に金価格が上昇したのは、初期反応として、前者の影響の方が強く意識されたためと考えられます。

一方で、後者については、10月11日にサウジアラビアが市場の安定を約束すると表明していることや、イスラエルは原油生産国ではなく、またイランの原油輸出量は大きくないことから、原油の供給が不安定化する可能性は低いと考えられ、中東情勢の突然の悪化に伴った初期反応としての原油価格の急騰は、この先一旦和らいでいく方向であると見込まれます。

従って、米インフレ率は和らぎ、米長期金利も低下していくと見込まれます。これは、金価格にとっては押し上げ要因です。金価格は、中東情勢がこの先悪化/改善した場合、双方において上昇する経路があると言えます。他方、金価格が下がる経路には、中東情勢が改善した上で、米長期金利は上昇する、つまり米景気が上振れるケースが挙げられます。

原油価格については、上述した通り、中東情勢絡みの供給側要因による上昇は、この先一旦落ち着いていく方向と見ています。したがって、原油価格が上昇するには、世界景気が上振れ、原油需要が高まる必要があると考えています。主に、中国と米国の景気動向が原油の需要動向として注目されます。

以上をまとめると、中国や米国の景気見通しがこれから上振れる場合には原油、そうでない場合には金という選択基準が導かれます(中東情勢が安全資産需要としての金需要に直接的に与える影響は除く)。

(出所)野村證券経済調査部より野村證券投資情報部作成

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