先週:金利上昇の一方、業績予想は上方修正

前週の米国株は、米長期金利(10年国債利回り)は週後半にかけて緩やかに上昇となった一方で、アナリストの今期業績予想の上方修正が進みました。

リビジョン・インデックスはFY1で大きく上振れ

(注) S&P 500 指数構成企業のリビジョンインデックス。リビジョンインデックスは直近4週間にアナリストが業績予想を上方修正した銘柄数/下方修正した銘柄数で計算。指数が1を上回ると上方修正優位、1を下回ると下方修正優位と判断される。直近値は2023年11月10日時点。FY1は予想1期目(12月決算企業の場合、2023年12月期)、FY2は予想2期目(12月決算企業の場合、2024年12月期) 。(出所) LSEG(旧リフィニティブ)より野村證券投資情報部作成

上図から読み取れる通り、7-9月期決算本格化前~発表中に下方修正優位であった今期(FY1)のリビジョン・インデックス(RI)が1.0を超え、上方修正優位にシフトしています。このことは、先週の米国株価には追い風になったと考えられます。

一方で、来期(FY2)のRIは下方修正優位で推移しています。このことは、ここまで発表された実績が予想を上回り、今期の上方修正につながった一方で、来期以降の予想については依然として慎重に見ていることを示唆しています。7-9月期決算自体は4四半期ぶりの前年同期比での増益となる公算が大きくなっており、その後も成長軌道への回帰が期待されている中で、市場(アナリスト)の来期見通しが、後述の6-8月期決算発表などを通し本格的な上方修正に転じられるかが今後の焦点となります。

Point1. 8-10月期決算がスタート

米国では早くも8-10月期決算がスタートします。

注目されるのは、システム・アプリケーションの先行きを見る上で15日(水)のシスコシステムズ(CSCO)、半導体投資を見る上でアプライド・マテリアルズ(AMAT,半導体製造装置大手)、米消費の堅調さを見る上で16日(木)のウォルマート(WMT)です。特に、年末商戦を前にして小売企業の先行きに対するコメントに関しては、マクロ面からも関心が高いと考えられます。

Point2.CPIは引き続き注目

先週末にはミシガン大学調査の予想インフレ率が発表され、全体として市場予想を上回りました。インフレ再燃の懸念がくすぶっている状態といえ、今週14日(火)発表の10月CPI(消費者物価指数)には注目が集まります。

野村では、10月のコアCPI上昇率は前月比+0.4%へ、9月の同+0.3%から加速すると予測しています。10月のCPI上昇率が野村予想通り加速する場合、現在の政策金利がインフレ率をFRBの目標である+2%に向けて低下させるうえで 「十分に抑制的」 ではないという懸念を引き起こす可能性があります。しかし、金融機関の貸し出し態度の厳格化など最近の金融環境の引き締まりを考慮すると、追加利上げの可能性は小さいものと思われます。

また、今週は、FOMCの中心メンバーであるジェファーソン副議長(14日講演)やウィリアムスNY連銀総裁(16日講演)の発言も市場の関心は高いと考えられます。

Point3.暫定予算成立に暗雲、ボラティリティ高まる懸念

17日(金)には、米国で暫定予算が期限を迎えます。

下院議長の選出が遅れたことから、予算にかける時間が限られ、政府閉鎖が発生するリスクがあります。過去の政府閉鎖では、連邦債務等に関連する財務省の業務が停止することはなかったため、連邦債務の法定上限問題が未解決の際に生じるような米国債のテクニカル・デフォルト(技術的債務不履行)のリスクは低いと考えられます。ただし、政府閉鎖が長期化し、12月8日発表予定の11月分雇用統計や、12月12日発表予定の11月分CPI(消費者物価指数)といった主要な経済指標の発表がキャンセルされる場合には注意が必要です。次回の12月13・14日のFOMC(米連邦公開市場委員会)において、FRB(米連邦準備制度理事会)が金融政策を決定する際の判断材料が金融市場に提供されない場合には、市場のボラティリティを高めかねません。

(FINTOS!外国株 小野崎通昭)

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