カナダでは、人口増加が著しい。カナダ統計局が発表した2023年9月末の総人口(推計値)は4,010万人となり、同国として初めて総人口が4,000万人を突破した。また、23年7~9月期の人口増加率は前年同期比+3.0%となり、これは日本のベビーブーム期(1947~49年)の年平均2.6%を凌駕する。こうした著しい人口増加は、2021年以降トルドー政権が取り組んでいる積極的な移民受け入れに起因する。

カナダはコロナ禍前から年間約30万人前後のペースで永住移民を受け入れてきたが、21年には約41万人、22年には約44万人を受け入れるなどそのペースを加速させている。①コロナ禍により20年の移民受け入れが事前の想定を大幅に下回った、②コロナ禍後シニア層の離職により人手不足が顕在化した、③米英やオセアニア諸国対比で少子高齢化が急速に進んでいる、といった事情が積極的な移民受け入れ政策に繋がっているとみられる。

こうした移民受け入れは、短期的には労働需給の緩和に寄与、インフレ圧力の緩和につながる可能性がある。一方、中長期的には住宅価格の上昇を通じてインフレ圧力をもたらすとともに、労働ストックの増加を通じて潜在成長率を押し上げるとみられる。積極的な移民政策は将来的に金利上昇要因として作用する可能性があろう。

一方、隣国の米国に目を向けると、23年9月の人口増加率(米商務省経済分析局推計値)は前年同月比+0.5%に留まっており、カナダの伸びを大きく下回っている。

これまでのカナダは原油への依存度の高さが米国との経済構造面での大きな違いとして知られてきたが、直近では原油高にもかかわらず鉱業部門への設備投資が滞るなど徐々にその性格が弱まってきている。今後は、人口増加率の違いがカナダと米国の間で経済面での乖離をもたらし、金融政策や金利、為替などに影響を及ぼす可能性があろう。

(野村證券市場戦略リサーチ部 秀嶋 智輝)

※野村週報 2023年11月20日号「経済データを読む」より

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