一人暮らしの高齢者を家族に代わって見守る機器の選択肢が増えている。

一人暮らしの高齢者は2020年で約670万人に上り、増加基調が続いている。独居高齢者は孤立しやすい傾向にあり、安否確認のための見守りが必要なケースがある。行政・地域による見守り活動が基本だが、近年は、人手不足の深刻化やテクノロジーの発展を受けて、見守り機器が注目されている。

これまで独居高齢者向けの見守り機器の多くは、高齢者が日常使う電化製品に取り付け、離れて暮らす家族が見守る「センサータイプ」や、高齢者本人からの通報を受けたり、センサーで異常を検知したりした場合に、24時間対応のコールセンターによる呼びかけや警備員の駆け付けなどの安否確認を家族に代わって行う「通報タイプ」であった。

近年、テクノロジーの発展により増えてきたのが「コミュニケーションタイプ」である。カメラや複数の高機能センサー、通話機能、特定の日時になると音声で呼びかける通知機能などを備えたタイプである。人感、照度、温度、湿度などの複数センサーの組み合わせにより、家の中を歩く、電気を付けるなどの生活反応を把握できるだけでなく、熱中症アラートや火災予防などにも対応している。

また、離れて暮らす家族はアプリを活用して常時・リアルタイムの見守りが可能で、緊急時にはカメラでの目視確認や、通話機能での声かけも可能である。一部の機器はロボット型になっており、簡単な挨拶などをやり取りすることができ、高齢者の孤独感の解消にも繋がっている。

一方で、コミュニケーションタイプは、複数の機能を有するため比較的高価で一定の操作を覚える必要がある、Wi-Fi 環境での利用が原則となるなど、高齢者にとって導入のハードルがやや高くなっている。また、家族による日々の安否確認と緊急時の駆け付けが前提となるため、通報タイプと比較すると家族の見守りの負担は大きい。

見守り機器の選択肢の増加は競争過多に繋がっている面を否めず、販売やサービスが終了となる機器も散見される。広告宣伝の負担、販路の確保が課題と見られ、新規参入にあたっては、アライアンス戦略など工夫が必要だろう。

(野村證券フロンティア・リサーチ部 杉本 佳美)

※野村週報 2023年11月20日号「新産業の潮流」より

※掲載している画像はイメージです。

【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら

ご投資にあたっての注意点