先週:長期金利低下が後押し、株価3週連騰

前週の米国株は、米長期金利(10年国債利回り)が4.6%台から4.4%台に低下し、株価の追い風となりました。懸念されていた政府閉鎖が回避されたことも市場に好感されたと見られます。

10月コアCPIが下振れ

金利低下の主因として10月のコアCPI(消費者物価指数)が前月比+0.2%と市場予想(同+0.3%)を下回ったことが挙げられます。自動車価格や宿泊費など変動幅の大きい項目が予想を下回ったことに加えて、定額中継配信サービス価格の上昇が報告されたにもかかわらず、動画・音楽配信サービス価格も下落しました。追加利上げのリスクは低下したと考えられます。

Point1:更なる長期金利低下は限定的か

米長期金利の低下は持続的でしょうか。市場は既に2024年に計1.00%ポイント程度の利下げを見込んでおり、9月FOMC(米連邦公開市場委員会)で示された計0.50%ポイントと比較すると、利下げ期待が先行しています。

11月FOMCでは追加利上げを見送りとした判断の根拠として、長期金利上昇による金融環境の引き締めが挙げられていました。長期金利の水準が更に低下した場合、今後FRBのタカ派的なバイアスを強める可能性があります。FRBは現行のFFレート水準を相当程度維持する、とのスタンスを改めて表明し、市場をけん制することが考えれます。野村は2023年12月末の長期金利は4.6%と予測します。その意味でも、21日(火)に発表される11月FOMC議事録は注目です。

Pont2:エヌビディア決算、予想EPSを方向性づけるか

リビジョンインデックスの動向

(注) S&P 500 指数構成企業のリビジョンインデックス。リビジョンインデックスは直近4週間にアナリストが業績予想を上方修正した銘柄数/下方修正した銘柄数で計算。指数が1を上回ると上方修正優位、1を下回ると下方修正優位と判断される。直近値は2023年11月17日時点。FY1は予想1期目(12月決算企業の場合、2023年12月期)、FY2は予想2期目(12月決算企業の場合、2024年12月期) 。(出所) LSEG(旧リフィニティブ)より野村證券投資情報部作成

上図から読み取れる通り、7-9月期決算本格化前~発表中に下方修正優位であった今期(FY1)のリビジョン・インデックス(RI)が1.0を超え、2週連続で上方修正優位となっています。アナリストの来期(FY2)見通しが、8-10月期決算発表などを通し上方修正に転じられるかが今後の焦点となります。

今週は、21日(火)引け後に予定されるエヌビディア(NVDA)など、情報技術セクターの決算発表が注目されます。

今年の5月頃には生成AI関連の銘柄に関心が集まり、関連企業の株価は大きく上昇しました。その後、株価は下落に転じたものの、一部の銘柄は堅調な推移に戻りつつあります(エヌビディアの株価は14日に496.56ドルと年初来高値を更新)。

背景には、7-9月期決算発表等を通じ、企業のIT投資拡大は進んでおり、生成AIが実用化~大きな収益源との証左が見られていることが挙げられます。マイクロソフトは、ChatGPTを活用した「Microsoft 365 コパイロット」(大手顧客向けに2023年11月1日から提供)の利用に向け、事業会社が幅広い分野でIT投資を拡大させたとコメントしています。また、アマゾン・ドットコムは、大規模なデータセンター投資は2024年以降と市場の一部の期待よりやや後ずれしていることを表明したものの「生成AIは今後数年間で数百億ドルの売上高を生む」とコメントし、生成AIの収益化に自信を示しています。

今後は、生成AIが実際に利益向上に貢献してるかが大きな銘柄選別のポイントと考えられます。まずは、半導体業界の動向を見る上で、エヌビディアの業績に高い関心が集まります。

Point3. サンクス・ギビングデー以降は年末商戦突入

今週、23日(木)は感謝祭の祝日で休場、翌24日(金)は短縮取引です。感謝祭翌日の金曜日は「ブラックフライデー」と呼ばれ、小売業界で年末商戦が本格化します。15日(水)に発表された10月小売売上高では、裁量的(生活必需品ではない)品目の比重が高い業種の多くで、前月比、前年同月比共に売上高が減少していました。10日(金)に発表されたミシガン大学消費者調査では、経済の先行きに対し消費者のマインドが低下している上、インフレへの警戒感が根強いことがうかがえました。

年末商戦については例年、メディアが売れ行きの状況などについて報じています。今週発表される小売関連企業の決算動向と併せ、感謝祭週末のセールの報道などを通じて、消費者の購買動向などを確認したいと考えます。

(FINTOS!外国株 小野崎通昭)

ご投資にあたっての注意点