大和ハウス工業(1925) 建設

米国は新築住宅需要が回復

住宅建築のみならず商業や物流施設の建設及び開発事業も手がける総合建築会社。2023.3期は、一括で会計処理する退職給付数理差異益が966億円発生し、営業利益を押し上げたのに対して、24.3期は前期比17%減益を予想するが、同利益の効果を除けば、実質増益である。

国内の住宅需要は弱いものの、物流施設など非居住用の開発事業が好調な上に、新型コロナの悪影響を受けたホテルやスポーツジム事業が業績回復するためである。

また、米国では金利高により、中古住宅の流通量が減少している影響で、新築住宅の需要が強まっており、当社の戸建事業も回復傾向にある。

ROE13%達成に向けて

27.3期を最終年度とする中期経営計画では、売上高5.5兆円、営業利益5,000億円、ROE(自己資本利益率)13%以上を目指す。厳しい経営環境下、中計初年度の23.3期は、退職給付数理差異益を除いても会社計画を上回ってスタート、自己資本が想定以上に積み上がった。ROE13%達成には、利益の更なる増額と自己資本の調整が必要となっている。24.3期には上限350億円とする自社株買いを実施予定である。

不動産の賃貸管理のストック型事業や海外事業などで利益の上積みをはかりつつ、株主還元策として配当性向35%以上に自社株買いを組み合わせる。利益成長期待と併せて好材料となろう。

(野村證券エクイティ・リサーチ部 福島 大輔)

SMC(6273) 機械

空圧機器の最大手メーカー

1959年に工業用フィルタのエレメントを製造する焼結金属工業として設立され、社名は焼結金属を英語に訳した「SinteredMetal」と「Company」の頭文字に由来。61年から空気圧補助機器の製造・販売を開始し、空圧機器では2022年度の世界シェアで37%を有する最大手メーカー。

空圧機器は工場の生産ラインにおける加工、組付けなどのファクトリーオートメーションや、医療機器、半導体製造装置における自動検査装置など、あらゆる産業機器の自動化に欠かせない機械要素部品である。足元では機械受注に代表される設備投資動向はダウンサイクル下にあるが中長期での成長性は高いと考える。

受注は引き続き低調だがボトム圏にある

24.3期上期決算では、7~9月期の受注は23.3期の平均値を100としたベースで78と前四半期の88から減少し、各地域、各用途とも減少した。10月の月次も77と、7~9月期から大きく状況は変わっておらず受注の回復はまだ顕在化していない。

ただし電機向け(特に半導体向け)では過去の経験値から見て受注はボトム圏の水準にあるとの認識が決算説明会では示されており、回復は遅れているが、もう一段受注が減少する状況でもないと見られる。野村では24.3期は前期比19%営業減益と据え置かれた会社計画よりもやや保守的に予想するが、25.3期は29%営業増益と業績の大幅回復を予想する。

(野村證券エクイティ・リサーチ部 前川 健太郎)

ローム(6963) 電気機器

2024.3期下期は上期比増収の見通し

半導体需要の回復遅れを受けて短期業績は厳しく、会社は24.3期上期決算発表時に通期計画を下方修正した。ただ、下期の売上高計画は上期比214億円増収と同業他社を上回る増収想定である。車載向け集積回路が在庫調整終了に伴い回復、SiC(炭化珪素)等パワー半導体も電気自動車向けに新規採用が進み、達成可能であろう。

半導体需要は二極化が長期化している。小信号デバイス等汎用製品の在庫調整が続いているのに対して、パワー半導体は好調が持続している。汎用部品の需要低迷で売上が下振れの中、パワー半導体の積極投資に伴う固定費負担増で24.3期営業利益は前期比40.4%減益の550億円を予想する。

SiC の事業規模拡大は8 インチ化で対応

中長的な成長牽引役としてSiC が挙げられる。今後5年間に売上計上予定の23年9月末時点の受注残高は同3月末比2,000億円増の5,000億円で、26.3期売上高計画1,300億円の達成に目途が立った。パイプライン(交渉中の商談規模)は、25.3期~31.3期に5兆円とポテンシャルは大きい。

短期的には電気自動車の普及率が急速に高まっている中国市場が成長を牽引するが、27.3期以降は米欧中がバランス、28.3期以降は日本が急速に立ち上がる見通し。宮崎第二工場では8インチラインで24年の稼働を予定、デバイスに加えて基板の生産も検討しており、大口径化と材料の内製化で競争力が強化されよう。

(野村證券エクイティ・リサーチ部 山崎 雅也)

※野村週報 2023年11月27日号「銘柄研究」より

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