銀行収益3つの柱

銀行のビジネスは多様化していますが、主に資金運用、役務取引等、特定取引の3つの収益が銀行を支えています。預け入れられた資金(預金)等をもとに、貸付や投資を行い、貸付による金利収入などから預金に対して支払う金利の差額が、銀行における資金運用益となります。

預金金利(概ね短期金利)と貸付金利(概ね長期金利)の差は利ざやといわれます。日本ではこの利ざやは、都市銀行よりも中小企業向け貸し出しの多い地方銀行で高い傾向があります。また、銀行の収益に対する資金運用益の比率は地方銀行の方が高いことが一般的です。金融政策の変更が行われ、利ざやの改善がすすめば、全銀行において、とりわけ地方銀行の収益改善が期待されます。

(注)全てを網羅しているわけではない。
(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成

役務取引等は都市銀行で伸長

世界的な金利低下が続き、銀行は資金運用以外に手数料業務に注力してきました。銀行は、為替手数料や投信販売手数料などを得て役務取引等収益を拡大してきました。都市銀行では経常収支の4分の1強に達する収益となっています。金融ニーズの多様化に都市銀行は対応して収益を伸ばしています。

(注)全てを網羅しているわけではない。データは2014年度から2022年度。
(出所)(社)全国銀行協会資料より野村證券投資情報部作成

規模や資本力で優位な欧米銀行

リーマンショック以降、縮小する傾向にあるものの有価証券の売買などによる収益は欧米の大銀行にとっては重要な収益であり続けています。トレーディング収益などの特定取引収入は、資本力や各国の規制を背景に欧米の大銀行が収益力を保持しています。

ご参考:3つの収益からみる銀行株の一例

(地方銀行)

・しずおかFG(5831)

静岡県を地盤とし、健全経営で定評を得ている。店舗やシステムの効率化に注力するほか、ストラクチャードローンなど首都圏を主軸とする成長戦略にも一定の成果を上げている。

・めぶきFG(7167)

茨城県地盤の常陽銀行と栃木県地盤の足利銀行が2016年に統合して発足し、経営統合シナジーの創出が好調である。

・コンコルディア・FG(7186)

神奈川県と東京西部を地盤とする横浜銀行と、東京を基盤とする東日本銀行が統合して発足した。グループ総合力に強みを有する。

・千葉銀行(8331)

千葉県を地盤とする。法人関係手数料など手数料業務に強みを有し、効率経営で定評を得ている。独立路線を志向するもTSUBASAアライアンスを通じて地銀各行と連携し、アライアンス参加行の資産規模は大手行グループに匹敵する。

・ふくおかFG(8354)

福岡銀行を中核に、九州北部を主たる地盤とする。スピード感ある経営統合実行とそのシナジー効果実現で定評を得ている。iBankなど、フィンテックにおいてもユニークな取り組みを行っている。

(都市銀行)

・三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)

国内最大の金融グループで、国際展開に強みがあり、国際部門の利益(営業純益)寄与は3~4割に達する。東南アジア地場銀行を傘下に有し、国際業務展開は質的にも邦銀他行とは異なる。

・三井住友FG(8316)

本邦3メガバンクの一角を占め、収益力とスピード感ある経営に定評がある。事業ポートフォリオとしては、カード、消費者金融などノンバンク事業の構成比が相対的に高い。

・みずほFG(8411)

本邦3メガバンクの一角を占める。首都圏での顧客基盤や国内外での大企業取引に強みを有する。

(外国銀行)

・JPモルガン・チェース(A1214/JPM US)

ニューヨークに本社を置く世界有数のグローバル総合金融グループで、機関投資家向け事業を「J.P.モルガン」ブランドで、中小企業、個人向け事業を「チェース」ブランドで展開する。

・バンク・オブ・アメリカ(A2322/BAC US)

世界屈指の金融グループで、全米50州、米国領ヴァージン諸島の他35ヶ国超に拠点を置く。

・HSBC HD ADR(A1743/HSBC US)

イギリス系の大手金融グループで香港で発祥した。世界62ヶ国・地域に約3,900拠点を置く。

(注1)全てを網羅しているわけではない。FGはフィナンシャルグループの略。地方銀行は野村證券エクイティ・リサーチ部がカバーする銘柄中、時価総額上位5行(2023年11月22日時点)。外国株式のコードは、野村コード/ブルームバーグコード。
(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成

(野村證券投資情報部 神谷 和男)

※画像はイメージ。

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