2023年10月30日にG7(主要7カ国)は、「広島AIプロセスに関するG7首脳声明」とその指針・行動規範を発表した。声明は冒頭で「生成AIがもたらす革新的な機会と変革の可能性を強調する」と、生成AI(人工知能)を活用する方針を示した。

G7首脳声明を受けた関係当局が制度や法令の整備に着手しており、生成AIの具体的な社会実装は早まりそうだ。中でも、生成AIを主導する米国大手クラウド企業に対する競争当局の調査が先んじて開始されたことは、これら企業の優位性が高まることが明らかなことを示唆している。

インターネットを中心としたIT(情報技術)の世代は、従来はプライバシー保護や効率性の観点からデータを一元管理する「中央集権型」のクラウド中心のWeb2.0から、データをスマートフォンなどで保持する「分散型」のWeb3へ移行し、クラウド企業が衰退する一方で新しいサービスを提供する新興企業が台頭するとみられた。

しかし、生成AIは現状では事前にデータセンターで機械学習させたデータツールにアクセスするクラウドの仕組みを必須とする。IT の世代の主流は、従来のクラウド(Web2.0)から、生成AIの活用を前提とする「新しいクラウド」へ移行し、Web3やEU(欧州連合)が提唱するWeb3にAIを組み込んだWeb4.0などと共存することになると考える。

米国の23年7~9月期決算発表時に、複数の大手クラウド企業が、「生成AI 関連のクラウド事業の設備投資は2024年以降本格化する」、「生成AIは今後数年間で数百億ドルの収益を生む」、などとコメントした。生成AIは、ビジネスソフトへの組み込みによるサブスクリプション料金の値上げや追加課金などWeb3と比較して「儲かる」ことが鮮明になった。これにより24年以降に生成AI関連の設備投資が本格化することで、その設備投資の受け皿企業などに恩恵がもたらされよう。

決算では、生成AIのビジネスでの活用を前にPC など企業のIT 設備投資が市場予想よりも早く底打ちしたことが確認された。ビジネスでのクラウド企業の重要性は増すと考える。従来の大手クラウド企業が生成AIの担い手になることで「新しいクラウド」の中心企業として競争上の優位性を高めるだろう。

(野村證券投資情報部 竹綱 宏行)

※野村週報 2023年12月4日号「投資の参考」より

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