BTFP(バンク・ターム・ファンディング・プログラム)は、2023年3月12日に米地銀のシリコンバレーバンクの破綻を受けFRB(米連邦準備理事会)が導入した銀行に対する融資プログラムで、主な内容は下記の通りです。

  • 債券などの担保を額面価格で評価し同額を融資
  • 融資期限は2024年3月11日

下の左側の図表では、BTFPの残高と、米国の主要株価指数であるS&P500はある程度連動したようにみえます。また、下の右側の図表では、逆目盛で示したシカゴ連銀が発表する全米金融環境指数(低いほど融資が受けやすいなど金融環境が緩和的なことを意味します)とS&P500はおおむね連動しました。

FRBはインフレを抑制するために、地銀破綻以降も量的引き締め(QT)や利上げを継続し、これらにより本来であれば金融環境は引き締まるはずでした。しかし、BTFPによる金融機関への短期資金の供給が銀行の連鎖倒産を防ぐとともに金融環境を緩和的にしたことが、株価の下支えになったと推察します。

資産・負債マネジメント(ALM)の欠如が地銀破綻の原因でした。米長期金利の上昇により地銀が保有する債券などの資産価値が低下したことで、資本が棄損するとの思惑から、預金が引き出されました(注)

BTFPにより債券などの資産が実質的に(下落した価格でなくより高い)額面で評価されたことで、連鎖倒産の懸念は和らぎました。ただし、長期金利(米10年国債利回り)は、2017年から2022年までの日次平均は約2.1%で、2024年1月6日現在は約4.0%であることから、地銀が保有する債券価格が取得価格に戻るには一段の利回り低下が必要となりそうです。

2023年9~12月の長期金利低下時に米国株の上昇をけん引したのは銀行株でした。銀行株は通常金利上昇時に、純金利収入の増加などを理由に上昇することが一般的です。金利低下で銀行株が上昇したのは、銀行のALM修正がまだ済んでおらず、金利低下による資産価値の上昇の方が、収入の増加よりも影響が大きいと市場はみているようです。

米民間銀行全体でみると、引き出された預金は戻っていません。また、銀行のクレジットカードローンなどの与信残高は増加しており、融資の増加分は債券などの売却や、BTFPなどによる融資でまかなわれていると考えられます。BTFPが2024年3月11日に終了した場合、地銀は担保に差し出した資産を売却するか、借り換えなどで資金を調達する必要があります。ただし、担保の価値が額面価値まで戻っていない場合は、債務超過懸念が再燃する可能性があります。

最高値を付けた米国株が2024年に上昇を継続するには、まずは①BTFPの延長かQT・リバースレポの見直しなど同等の措置、もしくは、②長期金利低下による債券型商品等の価格上昇、が必要と考えます。

(注)長期金利が上昇すると長期金利に連動する債券型商品の価格は下落する。貸借対照表(バランスシート)上は、資産価値が減少した際に負債価値も同額減少すれば(=ALMがうまく機能すれば)資本価値は不変だが、破綻した地銀は、短期金利がゼロの時期に短期で借り入れて、長期で運用する手法を取るなど、ALMがずさんだったため資本が棄損したと考えられる。

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