再生可能エネルギーの導入が加速

2015年のパリ協定を契機として世界がカーボンニュートラル(以下、CN)の実現に向けた取り組みを強化しています。加えて、2022年のロシアによるウクライナ侵攻によりエネルギー安全保障の重要性が再認識され、化石燃料に対する依存や、エネルギー資源を輸入に頼ることに対する危機感が高まったことが、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の導入を後押ししています。IEA(国際エネルギー機関)は2030年の世界の総発電量に占める再エネの割合が47.2%となり、導入が加速すると予想しています。

(注1)2030年以降はIEA(国際エネルギー機関)の公表政策シナリオ(Stated Policies Scenario)による予想。(注2)TWh(テラワット時)は、1時間当たり1兆ワットのエネルギー量。
(出所)IEA「World Energy Outlook 2023」より野村證券投資情報部作成

再エネ電力の供給調整を担う蓄電池

自然エネルギーは季節や天候に大きく左右され、主電源として導入するには、不安定性という課題が生じます。この解決の一助となるのが蓄電池の活用です。再エネで発電された電力が需要を上回る場合、蓄電池に蓄電し、電力が不足した時には放電することで、電力系統の安定化を図ることができます。各国政府は再エネの導入促進に加え、蓄電池に対する政策支援も強化しています。世界の定置型蓄電池の設置容量は2030年に2022年比12倍の552TWhに拡大するとIEAでは予想しています。

(注)図はイメージ。全てを網羅しているわけではない。MCHはメチルシクロヘキサンで、トルエンに水素を融合させてMCHを生成し輸送先で水素を取り出す方法。
(出所)野村證券エクイティ・リサーチ部、各種資料より野村證券投資情報部作成

関連ビジネスの拡大が期待される

蓄電池の他にも、余剰となった再エネ由来の電力を水素に変換することで、電力供給の調整の役割が期待できます。国内で水素を生産し貯蔵すれば、エネルギー自給率の向上にも寄与します。CN実現に向けて再エネを主電源として活用するために、蓄電池や水素の活用など、新たなエネルギーバリューチェーンを構築することが求められています。再エネの導入加速に伴い、関連する企業の活躍が期待されます。

ご参考:再生可能エネルギー関連銘柄の一例

・戸田建設(1860)

国内で初となる浮体式洋上風力発電設備を長崎県五島市で2016年から実用化しており、商用運転を継続している。

・東レ(3402)

風力発電の回転翼(ブレード)に使用される炭素繊維を手掛けている。水素関連では独シーメンス・エナジーAGとPEM型(※)水電解によるグリーン水素製造においてパートナーシップ契約を結び、独自の電解質膜を提供している。

・旭化成(3407)

水電解装置を手掛けている。複数の10MWモジュールからなる大型アルカリ水電解装置を2025年までに上市する予定。

・日本碍子(5333)

メガワット級の電力貯蔵を世界で初めて実用化した「NAS電池」を提供している。大容量、高エネルギー密度、長寿命を特長とし、長時間にわたる電力の高出力供給が可能である。

・古河電気工業(5801)

再エネで発電した電力を蓄える定置型蓄電池である「バイポーラ(双極性)型」の鉛蓄電池を開発した。

・住友電気工業(5802)

2023年2月に「レドックスフロー電池」と呼ばれる大型の定置型蓄電池の新工場を北米に建設すると発表した。充放電を繰り返しても劣化しにくく、寿命は約20年とリチウムイオン電池の2倍になる。

・富士電機(6504)

風力発電で主に使われるIGBTパワー半導体に強みを持つ。

・伊藤忠商事(8001)

2023年9月に再エネの電気を充放電できる大型蓄電池で最大1,000億円の事業を始めると発表した。2030年までに、国内を軸に10~20ヶ所で蓄電池事業に参画する。

・豊田通商(8015)

日本最大級の再エネ事業会社ユーラスエナジーHDを傘下に持ち、世界各地で風力、太陽光等の事業を展開している。

・ネクステラ・ エナジー(A0234/ NEE US)

北米最大の再エネ発電事業者で、株式時価総額世界最大の公益企業である。主要事業としてフロリダ州の電力・ガス小売り部門や、米国及びカナダで風力・太陽光発電を中心に電力卸売事業を展開している。

・エンフェーズ・エナジー(A7536/ ENPH US)

米国を本拠とする太陽光発電テクノロジー企業である。家庭や小規模ビジネス用太陽光発電で使用されるマイクロインバーターやバッテリーストレージ、電力源の最適化AIクラウドソフトウエアなどを販売している。

・RWE(G0651/ RWE GY)

現在、ドイツで唯一、再エネによる発電から、水素の製造と貯蔵、産業用大口需要家への販売に至るグリーン水素バリューチェーンのすべての段階に携わる。

(注1)全てを網羅しているわけではない。外国株式のコードは、野村コード/ブルームバーグコード。※PEMはPolymer Electrolyte Membraneの略で、固体高分子膜。
(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成

(野村證券投資情報部 岩崎 裕美)

※画像はイメージです。

ご投資にあたっての注意点