世界で新型コロナのワクチン接種が進んでおり、金融市場では世界経済の回復への期待が高まっている。ワクチンは新型コロナの感染収束に向けての切り札と考えられており、その普及は注目される。

 米ジョンズ・ホプキンス大学のデータによる一日当たりのワクチン接種(人口比)を見ると、6月14日時点では欧州のペースが速い。

 日本も5月中旬以降に大きく加速し、欧州に追いつきつつある。一方、米国は大きく減速している。米国では一部でワクチン接種を避ける動きが見られ、日本では供給体制が整備されつつあり、勢いの違いが鮮明である。日本政府の目標は7月末までの高齢者向けのワクチン接種終了であるが、その実現可能性はある。

 直近7日のペースが続くと仮定して、全人口の70%のワクチン接種で集団免疫(人口の一定割合が免疫を持ち感染が抑制されること)に到達するとの前提をおくと、そのタイミングは英国で7月、EU(欧州連合)で9月、米国で10月となる。また野村では現状の普及ペースや確保状況を踏まえて、日本は12月27日の週に集団免疫に達すると予想している。

 金融市場への影響を探ると、ワクチンの進展は株式市場においてはポジティブに作用すると考えられる。新型コロナ感染状況の相対的な悪化が材料視されていた国や地域では出遅れが解消されていくだろう。また為替市場においては、グローバルの株価上昇によるリスク心理の改善が影響を及ぼしやすい。円相場は株高時に下落する傾向があることを踏まえると、円安トレンドが進みやすいだろう。加えてワクチン普及の進展は景気の追い風となるだろうが、日本銀行の金融政策が正常化するとの期待は高まりにくく、金利差の面からもドル高円安が進みやすいと考えられる。

(春井 真也)

※野村週報2021年6月21日号「経済データを読む」より

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