連続増配企業への投資を考える

株式市場は、時として様々な理由により大きな変動を余儀なくされます。2008年のリーマンショックをはじめ、近年では2020年の新型コロナ感染拡大、2022年のウクライナ紛争による株価の大幅調整が挙げられます。

こうした中、長期的な視点で安定的な配当を得ることを目指す連続増配企業への投資が注目されます。

連続増配企業の強みと企業例

連続増配企業は新興テクノロジー企業のように、利益の急拡大を期待することは難しい側面があります。しかし社歴を重ねる中で、大幅な景気変動や各種のショックを乗り越え、ブランド力や技術力等を武器に、安定的な利益を創出しうる独自の経営スタイルや販売手法を培ってきた点に強みを持っています。そのため、単年度では減益に陥ることがあっても継続的な配当が可能で、これまで数々の危機を乗り越え市場で評価され続けています。

米国の連続増配企業の代表格として、強いブランド力を持つ清涼飲料世界最大手の米国コカ・コーラが挙げられます。同社はサプライチェーンの上位に位置する原液の生産を受け持ち、世界200以上の国と地域で、強いネットワークを通じて販売しています。

連続増配企業のパフォーマンス

(注)S&P500指数、S&P500配当貴族指数ともに課税後配当込み。直近値は2024年2月15日。
(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成

長期的な視点でみれば、米国の連続増配企業で構成されるS&P500配当貴族指数(課税後配当込み)のパフォーマンスはS&P500指数を上回る傾向がみられています。

世界経済や社会構造が大きく変化している時代だからこそ、長期的な視点で、連続増配企業が持つ本源的強みを重視した投資が注目されます。

(注)2024年1月31日時点。産業グループは、GICSによる。
(出所)S&P Dow Jones Indices LLCより野村證券投資情報部作成

ご参考:米国連続増配企業の一例

・キャタピラー(A0102/CAT US)

1925年に創業した。重機や発電用ソリューション、機関車などを手掛ける米国を代表するメーカーであり、建設機械の生産で世界トップ規模を誇る。

・コカ・コーラ(A0115/KO US)

世界最大の清涼飲料メーカーであり、炭酸飲料やミネラルウォーター、スポーツ飲料、エナジードリンクなどの主要カテゴリーで約200のブランドを展開している。世界の200以上の国と地域で、小売店やフードサービス店を通じてコカ・コーラブランドやライセンスブランドの製品を販売している。

・ターゲット(A0172/TGT US)

米国の小売事業者である。2023年11月時点で、米国に1,900を超える数の店舗を構える。売上高は1,000億米ドルを超え、年間に20億件超の注文を処理している。店舗の多くは都市部とその近郊に集中している。

・シェブロン(A0264/CVX US)

石油メジャーの一角で石油や天然ガスの探査・開発などから、精製・販売まで総合的に手掛けている。世界各地に鉱区を保有しており、M&Aで業容を拡大してきた。

・ゼネラル・ダイナミクス(A0277/GD US)

戦車や原子力潜水艦、通信システムなどの防衛関連事業と、ビジネスジェット(ガルフストリーム)製造など幅広い製品・サービスを製造・提供している。主要顧客は米国防総省である。

・IBM(A0353/IBM US)

主にソフトウエアやIT サービス、コンサルティング、並びにハードウエアを提供している。175の国と地域に進出しており、パートナー企業は8万社に上る。顧客企業に提供している製品やサービスを通じて世界のクレジットカード決済の9割に、世界の無線通信の5割に携わっている。

・マクドナルド(A0460/MCD US)

ファストフードチェーン「マクドナルド」を展開しており、直営店、フランチャイズ店、及びライセンス供与が収益の柱である。最新デジタル技術の導入や、デリバリープラットフォームの活用などを押し進めている。

・プロクター・アンド・ギャンブル(A0588/PG US)

1837年に創業した。有名ブランドを数多く抱える世界最大級の日用品メーカーである。主なブランドには、乳幼児用紙おむつ「パンパース」や衣料用洗剤「アリエール」、エアケア製品「ファブリーズ」などがある。

・メドトロニック(A6637/MDT US)

医療機器の最大手の一角を占める。心臓ペースメーカーや除細動器、心臓弁など慢性疾患のための医療機器の開発・製造を手掛けている。世界150ヶ国に9.5万人以上の従業員を擁する。

・リンデ(A7250/LIN US)

世界最大の産業ガスメーカーであり、100以上の国・地域で事業を展開している。主力製品はエアセパレートガス(空気から分離・製造される酸素、窒素、アルゴンなど)と精製ガス(水素、二酸化炭素、ヘリウムなど)、並びに産業ガス生産に用いる装置である。最終市場は化学や製造業、ヘルスケア、製鉄など多岐にわたる。

(注1)全てを網羅しているわけではない。 (注2)外国株式のコードは、野村コード/ブルームバーグコード。
(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成

(野村證券投資情報部 寺田 絢子)

※画像はイメージです。

ご投資にあたっての注意点