日経平均株価は、2024年2月、34年ぶりの史上最高値を更新しました。図1は、東証の業種別にみた利益構成比の、現在と34年前との比較です。34年前、東証1部で最も多くの利益を生み出していたのは銀行でした、次いで電気機器、証券業、輸送用機器となっています。一方、現在の東証プライム市場では、銀行業は5位に沈み、証券業に至っては圏外となっています。

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この34年間で、日本経済は様々な分野・業種で、規制緩和・自由化が進みました。最も規制が強い業種の一つであった金融は、こうした規制緩和・自由化の影響が大きく利益構成比を大きく落とすことになったと考えられます。

金融にかわって現在では、厳しい国際競争に打ち勝った輸送用機器、同じく厳しい事業環境にさらされ、事業ポートフォリオの改善に取り組んだ電気機器などが上位に位置しています。情報化・規制緩和という波にのった通信、口銭ビジネスから投資へとビジネスモデルそのものを転換した卸売業も上位に位置しています。

なお、東証1部の経常利益総額は1989年度で23兆円でしたが、現在の東証プライムでは80兆円とおよそ3.5倍に達しています。株価水準こそ34年前と同じですが、利益面での裏付けは当時とは比較になりません。

図2は、東証の業種別に見た時価総額構成比の、現在と34年前との比較です。利益面と同じように、時価総額構成でも、当時トップだった銀行業の地位低下が目立ちます。

かわって、国際競争力の向上に奏功した自動車、あるいは事業構造やビジネスモデルの変革に成功した、電気機器や卸売業、あるいは規制緩和や成長分野をうまく取り込んだ通信業などが時価総額の上位を占めています。

また、東証1部の合計時価総額は1990年1月時点で563兆円でしたが、足元では918兆円と1.6倍強に増加しています。日経平均株価は水準こそほぼ同じですが、時価総額は大きく増加しています。株式市場では、成長性の高い企業が間断なく新たに加わることによって、指数の上昇以上に合計時価総額は増加しています。

(野村證券投資情報部 伊藤 高志)

(注)画像はイメージです。

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