主要先進国では、2024年に入り株価が好調に推移しています。中でも米国では主要指数が史上最高値圏にあり、日本でも日経平均株価は約34年ぶりの水準を回復しています。 

一般的に、株価が長期にわたり低迷したり下落した後に、短期間のうちに株価が大きく上昇すると、せっかく持っていた株式を途中で売却してしまいがちです。「やれやれ売り」と呼ばれる行動です。また、株価が短期間のうちに急激に上昇した際に、「もう上がらないだろう」と思ってしまい投資を控える、というのもありがちな行動です。「もうはまだなり」とも言われます。 

このような行動パターンに従って、長期間にわたり投資を行った場合、どのような結果となるのでしょうか?図1は、2008年9月のリーマンショック後、金融市場が大混乱から回復しつつあった、2009年年初から2024年2月までのS&P500の株価の推移を示したものです。赤い線が、S&P500そのもので、2009年年初を100とすると、この14年強で600にまで上昇しています。5倍もの上昇です。

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これに対して、大きく上昇した月の月末に保有していた指数を売却し、その後3ヶ月間は投資しない、というルールで投資した場合が灰色の線となります。先に指摘した、「やれやれ売り」と「もう上がらないだろう」という行動をルール化したものとお考え下さい。

※詳細なルールは資料の(注)をご参照ください。

このルールに基づくと、この14年間の投資成果は395に留まり、ずっとS&P500を持ち続けた場合に比べると得られるリターンは大きく見劣りします。もちろん、投資スタイルは様々であり、利益確定のための売却を戦術的に使うことは有効な場面もあり得ますが、長期上昇局面においては継続保有の成績を長期で上回ることは簡単ではないと考えられます。

継続保有のほうが有利という現象は、これまで米国と比べると長期上昇局面とのイメージが希薄であった日本の株式でも見られるようです。図2は、同じ期間に、同じルールで投資した場合の結果です。日経平均株価を継続保有した場合が452であるのに対して、今回設定したルールでは309に留まっています。日本でも、少なくともリーマンショック後は、継続保有戦略が有効だったといえるでしょう。

短期間のうちに大きく株価が上昇する時には、株価を上昇させるためのファンダメンタルズ上の強い要因が背景にあると考えられます。こうした強い要因が株価が上昇した1ヶ月間のうちに消滅することはすくないことが、継続保有が有利な結果につながっているのでしょう。

最後に、実際に売却をするべきかしないべきかの判断は、相場特性によるものではなく、自身のライフプランやリスク許容度に応じて判断されるべきものだという点も大変重要です。当資料における試算結果を一つの材料としてうまく参照しながら、資産運用のゴールを目指していきましょう。

(野村證券投資情報部 東 英憲・小野崎 通昭)

(注)画像はイメージです。

ご投資にあたっての注意点