先週:2年3ヶ月ぶり、ナスダックが史上最高値を更新

先週の米国株式市場は、インフレ再加速への警戒から週半ばまでは上値が重い展開でした。しかし、2月29日(木)寄り前発表の1月コアPCE(個人消費支出)デフレーター(FOMCで参照されるインフレ指標)がほぼ市場予想通りとなり、インフレ警戒感が後退して米長期金利が低下、2年3ヶ月ぶりにナスダック総合指数が29日(木)には終値ベースで史上最高値を更新し、3月1日(金)には場中での史上最高値も更新しました。同日、S&P 500 指数も史上最高値を更新しました。

今週のポイントは2点です。

ポイント1:パウエルFRB議長の議会証言

3月9日(土)以降、19日(火)・20日(水)開催のFOMC(米連邦公開市場委員会)を前に、FRB(米連邦準備委員会)幹部は沈黙期間に入ります。そのため金融政策に関するFOMC参加者コメントには注目が集まりやすく、特にパウエルFRB議長の議会証言は高い関心を集めています。6日(水)には米議会下院で、7日(木)に米議会上院での証言が予定されています。

また、8日(金)には2月雇用統計の発表が予定されています。非農業部門雇用者数の市場予想は前月比+19.3万人(1月同+35.3万人)と予想されていますが、6ヶ月平均で見れば月+25万人と、労働市場が堅調な推移が示唆されます。時間当たり賃金でインフレ減速、雇用者数で景気堅調が確認されれば、市場は米景気ソフトランディングへの見方を強め、株式市場には追い風となるでしょう。

ポイント2:2兆ドル超えのエヌビディア、1兆ドル割れのテスラ

足元の米国株上昇には、マグニフィセント・セブン(大手テクノロジー企業7社)が大きく寄与していますが、実はこの7社の中でも明暗が分かれています。もっとも株価の上昇率が高いのはエヌビディア(2023年末比+66%)、もっとも下落率が高いのはテスラ(同-18%)です。エヌビディアの時価総額は1日(金)に2兆ドルを超え、マイクロソフト、アップルに次ぐ時価総額世界3位です。一方のテスラは6000億ドル台、時価総額で米国10位(2024/3/1時点)と、その他のマグニフィセント・セブン銘柄だけでなく、製薬のイーライリリーや通信用半導体のブロードコムよりも低い位置になっています。

ここで、2023年10-12月期決算発表前と現在で2024年通年の各セクター(S&P500の産業グループ)の増益率予想がどのように変化したかを確認してみましょう。エヌビディアは半導体・半導体製造装置グループ、テスラは自動車・自動車部品グループです。

決算発表前(2023年12月29日時点)

現時点(2024年3月1日時点)

(注)表題の時点のLSEG(旧リフィニティブ)集計による市場予想平均。産業グループ名に付されている(   )内の番号は、識別のために野村證券投資情報部で付与している番号。*は景気敏感業種。

 (出所)LSEG(旧リフィニティブ)より野村證券投資情報部作成

半導体・半導体製造装置グループは、決算発表前から2024年の高い増益率が予想されていましたが、決算発表を終え増益率への確信度はさらに高まったようです。決算実績で示されたAIの処理を行うデータセンター向けの半導体への需要は市場の期待以上でした。当社やアドバンスド・マクロ・デバイセズといったデータセンター向け半導体メーカー各社は、演算用(ロジック)半導体にメモリーも搭載した最新の半導体を販売しており、高単価化が進んでいます。課題となっていた供給制約も、エヌビディアCEOのジェンスン・フアンCEOが決算後カンファレンスで制約解消に自信を示すなど明るい兆しも見えています。2024年を見通してみても、新製品の発表に加え中国向けの出荷再開の寄与本格化が期待されています。

一方、自動車・自動車部品グループを見てみると決算発表を経て増益率は低下し、産業グループごとの比較でも下位に甘んじています。EV(電気自動車)市場の普及スピードが鈍化しており、特に低~中価格帯のモデルで値下げとリベートの上昇による粗利益率の低下などの問題に直面しています。長期的には、新しい商機(次世代モデル、エネルギー貯蔵、EV充電インフラなど)の業績寄与、人工知能(AI)への投資なども評価対象として期待されますが、市場は反転のタイミングを見極めている最中です。

そのほかのグループに目を向けると、メディア・娯楽グループの増益率が高まっています。これは、メタ・プラットフォームズ等、業績に従来の広告業モデルだけでなく、AI製品の寄与を業績予想に織り込み始めたことが背景にあります。

決算が落ち着きつつある現局面は、業種やグループごとの情報を見極め、選別投資の準備を進める良い機会と考えます。上記表を活用し、個別株選定のヒントにしてみてはいかがでしょうか。

(FINTOS!外国株 小野崎通昭)

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